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「あそこの家の子どもに気に入られるようだから、最後までその関係を保つように、海に行ってきなさい」 清々しいほどに晴れ渡った青空。 そして、眼前に広がる青い海。 「うみーーっ!」 太陽の光を受けて反射する海のような、目をらんらんと輝かせた朱音は、その場に飛び跳ねた勢いのまま海に行こうとするのを、「ちゃんとじゅんびたいそうをしてからだよ」とすかさず肩を掴んだ。 「じゅ、⋯⋯なに?」 「じゅんびたいそう。きちんとからだをほぐさないと、ケガをしてしまうからね」 幼稚園や習い事のプールで先生が言っていたことを言い聞かせてみせるが、「だいじょーぶ!」と得意げな顔をした。 「けがしたら、レッドがたすけてくれるもん!」 そう言って、潜《くぐ》っていた浮き輪を見せつけた。 お馴染みのあの戦隊モノがプリントされた浮き輪だ。 そもそもの海に行くことになったきっかけにもなった代物で、紫音に一番に見せたいがために誘われたのもあった。 「⋯⋯そ、そうなんだね」 「うん! しおんにぃもいっしょにはいれば、だいじょーぶ!」 「え、ちょ⋯⋯あかとくん!?」 うんと両手を上げて、紫音も潜らせようとしているらしく、浮き輪を高くあげてみせるが、当たり前に朱音が小さく、紫音の頭には届かない。 一生懸命に背伸びまでする目の前の可愛らしい子に困惑していたが、段々と可愛いと思っていた時、「しゃがんで!」と怒られた。 「ふたりははいらないから、いいよ」 「だいじょーぶだもん!」 「だいじょうぶじゃ⋯⋯」 朱音にどう言えば、素直に従ってくれるだろうか。 これならば止めてくれるだろうかと、意外と頑固な彼に何かを言おうとした時。 「こら、紫音君のこと困らせちゃダメでしょ」 休憩する場所を準備していた朱音の母親が、ひょいと朱音のことを持ち上げて、「めっ」と窘めていた。 「しおんにぃをけがしないためだもん! こませてない!」 「"こまらせて"ない、ね。⋯⋯はぁ······。朱音は弟なんだから、紫音お兄ちゃんの言葉を素直に聞くんじゃなかったの」 「むぅ⋯⋯」 上手く出来るようになっていた頬を膨らませて、親の言うことに耳を貸したくないようで、だが、「しおんにぃ」の話をされて、反抗しようにもできず、せめてもの抵抗でしている様子だった。

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