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水のかけ合いに朱音が飽きてきた頃合いに、両手を持ってあげて、泳ぎを教えてあげたり、目の前で潜り、背後に移動して驚かすことを朱音の父親とやって、朱音を喜ばせてあげた。 それらも一段落し、朱音が「すなあそびしたい」と言うので、父親は母と共にパラソルの下、紫音は朱音と共に砂浴びをし始めた。 前に朱音が砂遊びをしたことを報告してくれた時、「一緒に遊びたかった」とも夢にまで見たりもしたが、こうして一緒に遊ぶことができて、とても嬉しい。 「しおんにぃ! そっちほっていって!」 「うん」 朱音がしゃがんでしまったら、ほぼ見えなくなるぐらいになかなの大きさの砂の山にトンネルを作りたいのだろう、そう言いながら、忙しなく穴を掘っている様子の朱音に、「あまりおおきくしないようにね」と釘を刺しつつも、紫音も目の前の山に手をかけた。 順調に穴を進めていくと、目一杯伸ばしている小さな手が現れた。 驚きを混じえつつも、大きく振っている手を握ると、握り返してきた。 「あっ、しおんにぃのてだ!」 嬉しそうな声を上げて、さっきよりも思いっきり上下に振る。 そのような反応をしてくれるのは、嬉しい。嬉しいけれども。 「あかとくん、せっかくのおやまがくずれちゃうよ」 「そうだった!」 パッと急に手を離し、「できたトンネルにみずをながす!」と言って、小さなバケツを手に取って、海の方へと駆けて行った。 朱音の父親は、さきほどの水遊びでヘロヘロになっているらしく、取った場所で横になっているし、紫音も同じようにさっきのことと加えて、連日の暑さに若干疲れが現れ始めていた。 だが、朱音は疲れを知らず元気いっぱいで、バケツから零すほどの水を汲んで、トンネルに流していた。 「しおんにぃも、みずをいっぱいもってきて!」 「え、うん······いいよ?」 紫音の返事を待たずに、いそいそとまた水を汲み上げて来ようとする朱音の小さな後ろ姿を見送りつつも、朱音に言われた通りに水を持ってきてあげようとするものの、肝心のバケツがなかった。 朱音の両親に持ってないかと聞きに言った。

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