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10.
何故、こんなにも恥ずかしく思えるのか。
両手を上げてそう思いながら、紫音のことを見ていた。
紫音はというと、半開きした口を開けて、朱音のことを見つめていたのも一変、堪えきれないというような笑みを零した。
「甘えん坊の朱音。いいよ、着替えさせてあげる」
ほら、バンザイして、と促され、その通りにすると、服を脱がされた。
瞬間、若干肌寒い外気に晒され、小さく震えた。
「まだ寒いもんね。早く着替えようか」
「てか、しおんにぃ。何に着替えさせるつもり⋯⋯?」
「さっき朱音が隠していたあの服」
さらっと言って、ベルトに手をかける紫音を慌てて止めた。
「え、どうしたの?」
「どうしたも何も! しおんにぃはアレが何なのか分かってんの!?」
思わず指差し、声を上げる。
すると、ようやく例の服を見た紫音はポツリと言った。
「⋯⋯朱音が、一年の時の文化祭で着ていた、メイド服でしょ?」
紫音との出来事以外に、自身の愚かな行動のせいで賞を取れなかったことが思い出される。
そのことがあって、紫音の非公式ファンクラブを作っていた、特に文化祭委員長が気持ちを改めたきっかけでもあった。
紫音と物置と化した教室の一角で、熱がこもっているのと、紫音のとで吐き出したという、恥ずかしくも苦い思い出ばかりじゃない。
嫌な思い出ばかりの方が多いと言える。
「⋯⋯あの時は、ごめんね。あんなことすべきじゃないのに」
「い、いや! あの後、しおんにぃとなかなか会えない時にあの時のことを思い出していたら会えないストレスもあってオナッて発散させていたというか⋯⋯──あ」
「え⋯⋯⋯だから、その服がそこに⋯⋯?」
「いやいやいや!! 何も言ってない! 何も言ってねぇ! ──っ」
両手を顔の前で振っていたが、いとも簡単に紫音に片手で取られ、小さく声を上げたのも束の間。
唇を奪われた。
「はへ?」と変な声が漏れると、紫音は笑みを深めた。
「可愛い。必死になって言うの、可愛いな、朱音は。⋯⋯じゃあ、あの服を着て、どんな風に自慰をしているのか、僕に見せて」
「へ⋯⋯⋯?」
ぽかんとしてしまった。
あまりにも考えつかないことに、頭が追いつかない。
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