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3.
紫音に会いに行くまでの自分を本気で殴りたい。
紫音に会った時、第一声がそう思ったし、拳を作っていた。
まず、エントランスで紫音を呼ぼうとした時から妙だった。
いつもならば、嬉しそうな声で迎えてくれるのに、紫音からの声は一切聞こえなく、扉が開かれた。
首を傾げながらも、紫音の住む部屋まで向かうと足元がおぼつかない彼が出迎えたのだ。
ふと、紫音の顔が真っ赤だと思った瞬間、朱音の目の前で倒れた。
「しおんにぃ!? しおんにぃ! どうしたんだ!」
急な状況に頭の整理がつかなく、けれども、どれほど身体を揺さぶってもぴくりとも動かない彼の状態に、ひとまずは寝かせないとと、引きずって寝室へと向かい、やっとの思いでベッドに寝かせた。
体温計が見つからず、手で額を計ったが、先ほどのことで一目瞭然だった。
「しおんにぃ、いつから熱だったんだよ」
苦しそうに息を吐く彼の姿が痛ましい。
きっと紫音のことだ。熱が出ようとも、普段通りに過ごそうとしたのかもしれない。けれども、無理が祟って倒れてしまった。
どんな形であれ、朱音が行くきっかけができて良かったと思うべきか。
とにかく、今は。
「待ってて、しおんにぃ。氷枕と何か食べられそうな物を用意してくるから」
普段であれば、逐一言葉を拾ってくれて返事してくれる彼は、うなされているような声しか返ってこない。
眉が下がっている己を叱咤し、早々に買い出しに行った。
落ち着かない気持ちのまま、どうにか必要なものを買い込んだ朱音は、その足で再び紫音の家へと帰ってきた。
「しおんにぃ、帰ってき──」
氷枕を持って、寝室に一歩踏み入れようとした足が止まった。
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