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6.
「しおんにぃ、俺が食べさせてあげようか?」
「⋯⋯いいの?」
「いいって。熱で頭がぼうっとするんだろ。それに、いつまでもそうやっていたら、アイス溶けちゃうし」
「ほら」と手を差し出すと、アイスとスプーンを手渡された。
「⋯⋯ごめんね。手を煩わせてしまって」
「気にすんなって。たまには俺に甘えてよ」
笑ってみせると、力なく笑い返してくれた。
その表情でも見れて良かったと思いつつ、一口分すくい、「あーん」と差し出した。
ところが、一瞬何をしているのか分からないというような顔をしたのだ。
あれ? 食べさせるって言ったよな? しおんにぃのところは違うやり方だったか? やっぱり、熱のせいでいつも以上にぼうっとしているな?
色々と考えている時、小さく口を開けた紫音はアイスを口に入れたことで、現実に引き戻された。
「それなら食べられそう?」
「⋯⋯うん。さすが朱音だね。⋯⋯ありがとう」
億劫そうに手を上げたかと思えば、弱々しく頭を撫でてくる紫音に、「無理すんなって」と言ったが、紫音にそうされるのが好きなため、まんざらでもない顔をしていた。
「しおんにぃ、まだアイス食べる?」
「うん⋯⋯朱音が言うなら⋯⋯」
「いや、食えそうになかったら、無理して食わなくていいよ。一口食ったから、薬飲めんでもないだろうし」
「⋯⋯じゃあ、あと一口で、終わりにする⋯⋯」
おずおずと口を開ける紫音にアイスを食べさせた後、薬を飲ませ、寝かせた。
小さく息を吐く紫音のことを見つめていると、彼は小さく言った。
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