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紫音の家庭環境に異常だと思う自分の育った環境が幸せな方だと思ってしまうのが、自分自身に嫌悪感を抱いてしまう。 起きてしまった最悪な出来事はどうしようもないが、朱音の家に預けられた時、そのまま朱音の家族になってしまえば良かったのにと、あの日、屋上で聞かされた時から思っていたが、今、またさらに強く思った。 そうしたら、彼の抱く嫌な出来事は、少しでも払拭されるだろうか。 こんな自己満足な考えでも、紫音は幸せだと思って、笑う日々が増えるだろうか。 その過ぎ去った日々に執着し、憂いを感じてしまうが、今は。 「しおんにぃ。俺ね、できることならそばにいてあげたい。しおんにぃが熱を出しても、そんなことを思い出させないぐらい、俺いっぱいにさせたいよ」 一番大切な人がこれ以上悲しい思いをしているところなんて見たくない。 いつぞやか、紫音も同じようなことを言っていたことを、あの時は大げさなと苦笑を漏らしていたが、こういう時、その気持ちが強くなる。 今はせめて、悪い夢を見ませんようにと気が済むまで撫で続けたのであった。

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