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ふたり占め#3 ⑥
◇◆◇◆◇
「はい、奏」
藍流がいちごのチョコを食べさせてくれる。
やっぱりおいしい。
「奏、俺も」
次は流風。
食べている俺より、俺が食べているのを見ているふたりのほうが幸せそう。
流風が俺の口元を拭った指をそのまま舐める。
「奏はほんとに可愛いなぁ…」
「すごくすごく可愛い…ああ可愛い…」
「……」
流風と藍流がうっとりと呟く。
チョコも甘いけど、ふたりはもっと甘い。
俺もふたりに、俺が渡したチョコを食べさせてあげようかと思ったら、一度で食べちゃったらもったいないから、次来た時にまた食べさせてって言われた。
ふたりが作ってくれたいちごのチョコは、使ってるのが生のいちごだから取っておけない。
ひとつずつ順番に食べさせてもらって、俺は幸せ。
藍流と流風の愛に触れていると、悩みや心配や不安が霞んで消えていくから不思議。
さっきまで心がすっきりしなかったのが、もう晴れている。
「…俺、やっぱりすごい自分本位」
「どの辺が?」
藍流が俺の顔を覗き込んで、優しい表情で聞く。
思った事、口に出てたんだ…。
「だって、藍流と流風を独り占めしてるし、それをやめる気全然ない」
俺はすごい欲張り。
どんなに愛されても足りなくて、もっともっととふたりを求める。
それに嫌な顔ひとつせず全部応えてくれる藍流と流風は、本当にすごい。
「それは自分本位じゃなくて、奏の当然の権利だよ」
「え?」
「だって俺と藍流は奏のものなんだから」
「……」
嬉しい。
そんな風に言ってくれるから、欲張りな俺は更に求めてしまう。
「…ほんとは、ふたりの笑顔も優しさも…全部俺だけに向けて欲しいって思ってる」
「……」
「ふたりの感情が動くのはいつでも俺が原因じゃないと嫌だし、俺だけがそれをできる唯一の存在でいたい」
藍流と流風は黙ったまま聞いている。
「……ずっとずっと俺だけのものでいて…」
言っちゃった。
ずっと心に引っ掛かっていた本音。
…でも、さすがに欲張り過ぎたかも。
ふたりはなんて言うだろう。
「「…奏、」」
「な、なに?」
ふたりの真剣な声が重なって、ちょっと身構えてしまう。
「ねぇ、あと十回くらい食べていい?」
「え?」
「そんな可愛い事言われたら、食べ尽くしたいの止まらない」
「あ…」
またベッドに倒されて、藍流と流風を見上げる。
「「今夜は寝られないかもね」」
綺麗に弧を描く唇。
交互に与えられるキスはチョコよりずっとずっと甘くて、でも刺激的で。
ふたりに抱かれてシーツの波間に溶けていった。
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