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ふたり占め#8 ④

◇◆◇◆◇ 「奏、本当に開けなきゃだめ?」 「だって食べて欲しい」 「食べたらなくなっちゃうよ」 「全部じゃないよ。一粒だけ」 「「……」」 俺がいっぱい泣いたお茶の時間は終わってもう少しで晩御飯の時間だけど、お茶を飲んだのが遅かったからお腹が空いていない。 だからせめて藍流と流風に金平糖を食べてもらいたいとお願いしたらこの通り。 「奏、あのね」 「うん」 「一粒が十個あって十粒になるの」 「うん」 「この小瓶には全部で何粒の金平糖が入ってるかはわからないけど、三十粒だとして、一粒ずつ三十回食べたら三十粒になっちゃうの」 「うん」 藍流がすごく丁寧に説明してくれるけど、そりゃそうだ。 なにを言ってるんだろう。 「一粒だけ、一粒だけって食べ続けたらどうなるかわかる? 最後にはなくなっちゃうんだよ?」 流風も真剣な顔をする。 言いたい事はわかった。 「藍流も流風も、食べてなくなっちゃうのが嫌なんだ?」 「「だからずっとそう言ってるじゃん!」」 なぜかよしよしってふたりに頭を撫でられる。 「でもとっておいて賞味期限切れちゃったらどうするの?」 「「………」」 「おいしいうちに食べて欲しいなぁ…」 「「………」」 あ、悩んでる。 ふたりが金平糖の入った小瓶をじっと見てる。 それから俺に同時に小瓶を差し出す。 「「食べさせて」」 「え?」 すごく真剣な顔。 「でも一粒だけ」 「賞味期限一年あるから少しずつ食べる」 「…『開封後はお早めにお召し上がりください』って書いてあるよ」 「……お早めに少しずつ食べる」 「俺も流風と同じようにする」 ふたりともこういうところ、ほんと可愛い。 小瓶を開ける俺をじっと見てる…なんだか緊張する。 まず藍流に金平糖を一粒食べさせてあげる。 「おいしい」 ふわっと微笑む。 次に流風に食べさせてあげると、流風も嬉しそうに微笑む。 「うん。おいしい」 それからふたりが一粒ずつ俺の口元に金平糖を差し出す。 「なくなっちゃうんじゃないの?」 「だってすごくおいしいから奏も」 「うん。食べて」 流風と藍流に言われて口を開ける。 二粒の金平糖がころんと舌の上で転がって、とっても甘くてにやけてしまう。 「奏がにこにこしてる」 「可愛い」 甘い金平糖と甘い甘い藍流と流風にどきどきする。 「……」 ふたりをじっと見る。 「なに?」 「どうしたの?」 「……」 藍流と流風が俺の頬に触れる。 ちょっと恥ずかしい。 でも。 「…欲しがってもいい?」 そっと流風にキスをして、藍流にキスをする。 ふたりのシャツの中に手を入れると、困ったような顔をされた。 「だめ?」 「うん」 流風が俺の首の後ろに手を回して唇を重ねる。 藍流が俺の着るパーカーの裾から手を入れ、直接肌に触れて腰から背中をなぞる。 キスに応えながらそっと瞼を上げて見ると、ふたりは優しく俺を見つめている。 「…なんでだめなの?」 キスが解かれて聞くと、藍流が俺の唇を指でなぞりながら微笑む。 「奏に欲しがってもらうのも可愛いんだけど、やっぱり俺達が可愛い奏を欲しがりたいから」 「んっ…」 今度は藍流のキス。 今日のふたりのキスは、いつも以上にくらくらする。 ベッドに運ばれて服を脱がせ合って、肌にキスが落ちてくる。 でもされるだけじゃなくて俺もふたりの肌にキスをする。 「奏、あんまり可愛い事しないで」 流風が俺をそっとベッドに倒す。 余裕のない瞳をしていても優しい手つきにどきどきして身体が熱くなる。 「…興奮してくれてる?」 そっと流風の胸に触れ、藍流の頬に触れる。 ふたりはその手を取って手のひらに舌を這わせる。 「奏に興奮しなかった事なんて一度もないよ」 「いつだってすごく興奮してる」 藍流と流風の熱っぽい声。 「ん…や…」 そのまま手首、腕へと舌が滑っていく。 両肩から胸へとふたりがちゅ、ちゅとキスをして胸の突起に触れる。 ちゅうっと吸われて軽く歯を立てられたら腰が跳ねた。 触られていないのにもう熱が昂っているのがわかる。 ふたりの手が滑っていって、奥の蕾をなぞる。 蕾はそれを待っていて、ふたりの指が欲しいと疼いている。 それに応えるように指が挿入ってきてそこをほぐしていく。 「あ…ん、あ」 ゆっくり丁寧にほぐされて心も熱くなっていく。 キスで蕩けていくのが気持ちいい。 指が増えてふたりにほぐされる感覚にぞくぞくする。 丁寧に丁寧に蕾をほぐして、また指が増やされた。

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