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ふたり占め#11 ②
「お弁当食べたら枝垂れ桜見に行こう?」
きっとすごく綺麗なんだろうな。
早く見たい。
「奏のわくわく顔ってほんと可愛いなぁ」
「ゆっくり食べて行こうね」
流風も藍流もにこにこだ。
三人でお弁当を食べるけど、ふたりともおいしいおいしいって食べてくれて嬉しい。
本当は食べたらすぐ枝垂れ桜を見に行くつもりだったんだけど、お腹いっぱいになったらちょっとのんびりしたくなった。
ランチボックスを片付けて三人で並んで座ってぼんやりする。
陽射しがすごく気持ちいい。
藍流と流風の手の甲をつつくと、ふたりが俺の手の甲をつつき返すのでまたつつく。
そんなつまらない事なのにとても楽しい。
こういう時間って大切。
「こういう時間、大切だね」
流風がぽつりと言うのでびっくりする。
「俺も今そう思った」
「俺も」
藍流もびっくりしてる。
こんな風な事があるとすごく嬉しくなってしまう。
ばかみたいに三人で笑って、枝垂れ桜を見に行く。
伊藤くんの言っていた桜のトンネルを抜けると枝垂れ桜を見つけた。
思わず足が止まってしまった。
すごく綺麗。
ソメイヨシノとまた違った綺麗さ。
散り始めているから、柔らかい風が吹くとはらはらと花びらが舞う。
「綺麗…」
これは目を奪われる。
なんとなくそうしたくなって藍流と流風の手を握ると、ぎゅっと握り返してくれた。
「奏、キスしたい」
「だめ」
「一瞬だけ」
「……」
藍流と流風のお願いに周りを見ると人だらけ。
「やっぱだめ」
キスシーン見られるとか恥ずかし過ぎる。
「じゃあこれだけ」
そう言って藍流と流風は繋いだ俺の手の甲にキスをした。
王子様だ…。
「そういえば、プレゼントはデートだけでいいの?」
「「うん」」
「俺はもっとたくさんもらったのに?」
「あのね奏、奏と過ごせる時間ってすごい事なんだよ」
「だからこのデートは俺と流風にとってすごいプレゼント。世界一周以上に豪華」
「世界一周…」
それはさすがに世界一周のほうが遥かに豪華だけど、ふたりがそれでいいならいいのかな。
「あ。そうだ」
スマホを出して枝垂れ桜の写真を撮る。
綺麗に撮れた。
すごく綺麗だから壁紙に設定したら、スマホを覗き込んだ藍流と流風が。
「奏、それあとで俺に送って」
「俺にも」
「? うん」
俺が頷くと、ふたりは嬉しそうに微笑む。
「俺も壁紙にして奏とお揃いにする」
「俺もする」
「……」
流風と藍流と、スマホの壁紙もお揃い…。
しかも俺が撮った写真でお揃いだからこの世で三人だけのお揃い。
顔が熱くなってきて心臓がどくんどくん言い始めた。
「……」
嬉しいのに恥ずかしい。
「俺と流風と奏で、お揃いひとつずつ増やしていきたいね」
「…うん」
「奏、真っ赤だね」
「……見ないで」
藍流と流風が俺の顔を覗き込む。
はらはら舞う花びらの中で俺もふたりの手の甲にそっとキスを返した。
◇◆◇◆◇
「そろそろ帰ろうか」
「…うん」
流風の言葉になんだか寂しくなる。
もうそんな時間か。
まだ一緒にいたいんだけどな。
「送ってくよ」
「うん、ありがと」
歩き出したところで桜を見上げていた人とぶつかってしまった。
「すみません! 大丈夫ですか?」
「こちらこそぼーっとしていてすみません……」
顔を上げたその男の子と目が合ってお互い一瞬固まった。
同い年くらいのすごくかっこいい男の子。
グレーがかった瞳がじっと俺を映している。
「奏、大丈夫?」
「あ、うん…」
藍流と流風で耐性があっても、いきなり現れたイケメンにびっくりしてしまった。
イケメンくんは固まったまま動かない。
「? 大丈夫ですか?」
この子のほうが大丈夫じゃないかも。
まだ固まってる。
「あ、あの…」
「?」
なにか言いかけてまた固まった。
ほんとにどうしたんだろう。
「! そちらの方は…」
イケメンくんは藍流と流風の存在に気付く。
「あなたのお兄さまですか?」
「え? ちが」
「お兄さま方、弟さんとの交際を認めてください!!」
弟さんって、俺…?
なんだか変な子にぶつかってしまったようだ。
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