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第10話 2章 凌辱
「若君様、仙千代殿にございます」
佑三が声を掛けると、中から義政が「入れ」と応える。
佑三が襖を開けて、仙千代は中に入る。そこには、義政と側仕えの者が三人いた。いずれも、ここ『若君の離れ』で傍若無人な面々だ。
入ってすぐの下座で頭を下げて控える仙千代に義政の声が掛かった。
「もっとこちらに来るのだ、そこへ座れ」
部屋の中央を指し示す。仙千代は、その言葉に従う。何か分からない、異様な空気感に緊張を覚える。
「どうじゃ、昨夜はよう寝られたか?」
「はっ、おかげさまでよう眠ることができました。そして若君様には、昨日は早々に過分のご配慮と共に見舞いの品まで頂き、まことにありがたく、御礼申し上げます。本日より、お勤め懸命に勤める所存にございます。何卒よろしくお願い申し上げます」
「そうか、よい心がけじゃな。で、そなた己の勤めは何か分かっているのか?」
戸惑う仙千代に、義政が続けて言う。
「そなたの勤めはの、わしを楽しませることじゃよ」
義政の意図を掴めず戸惑う仙千代を、義政は薄ら笑いで見る。嘲るような笑いだ。
側仕えの者も同じ表情だ。仙千代は言い知れぬ嫌悪感を覚える。ここから出て行きたくなった。
しかし、それは出来ないことも分かる。
「そなた、女は知っているのか?」
「……?」
「女は抱いたことあるのかと聞いている」
「ご、ございませんが……」
仙千代は、義政の意図が掴めず、混乱しながら応える。
「そうじゃろうの、男も知らぬじゃろ?」
益々混乱して、しどろもどろとなった仙千代に、義政はいきなり近づき手を掴む。
仙千代は、身の危険を感じ、咄嗟に逃げようとしたが、義政に押さえられる。
「どこへ行くのじゃ、ここから出ることは許さぬ。そなたには勤めがあるじゃろ」
蒼白になった仙千代に、義政は畳みかけるように言う。
「これからそなたは、ここで暮らすのじゃ。そなたの部屋も用意した。わしの玩具として、いつでもわしを楽しませられるようにな。それが、そなたの勤めじゃよ、分かったか」
仙千代は、混乱の極みにあった。どういうことかさっぱり分からないが、己の身が危ない事だけは分かった。
すぐにここから逃げ出したい。でも、どうしたらよいのか、全く分からない。言い知れぬ恐怖で仙千代の体は固まる。
「さく!」
義政が呼ぶと、心得たとい態で作之助が現れた。ひもを持っている。
「しばれ」
作之助がひもで仙千代の自由を奪っていく。
もう、仙千代は混乱と恐怖で、声も出ない。
「かわいそうじゃが、暴れると厄介じゃからな。おとなしゅうしておったら、解いてやる。よいか、ここでは素直にせよ、わしに逆らうことは決して許さん」
おびえて虚ろな目の仙千代の頭を掴み「わかたっか!」と畳みかけると、仙千代は僅かに頷いた。
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