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第27話 4章 義定討死
この時の津田朝頼の思いを知る者がいたら、その全ての者が、呆れただろう。それほど、津田が松川に立ち向かうことは無謀だと、誰しもが思った。
しかし、朝頼は違った。
三万の大軍! 上等だ! 受けて立ってやろう! 津田朝頼は熱く闘士をみなぎらせた。
大きな困難にこそ燃えるのが、津田朝頼という男だった。
「殿! 大変でございます! 丸井の砦を落とされました!」
「丸井のか! 松川の先陣にか?」
「はい、そうでございます。先陣は高階です」
「高階かぁ~やはり、こちらにはつかなんだか……」
津田家は、高階家へ味方になるよう誘っていた。松川についていても、命じられるのは、危険な先陣ばかり。それよりも、我が津田と共に力を合わせて松川に立ち向かおうと。しかし、高階の返事は芳しくなかった。
「まぁ……そうだな、嫡男を人質にされていたらなぁ」
嫡男を人質。それが松川の狡猾なところであった。
兄弟や正室では、見殺しにすることもありえた。しかし、嫡男を見殺しにはできない。家を継ぐ者がなければ、家は存続できないからだ。
ましてや高階家は、仙千代は貴重な一人子だった。仙千代が、松川家にいる限り、どんな無理難題でも飲まざるおえなかった。
そこを考えての、嫡男仙千代への人質要求だった。此度の、高階からの、仙千代元服と初陣願いを退けたのも、太守義定の意向が大きかった。
松川にしてみれば、上洛途上にある高階の大高城。高階を、上洛の先陣、露払いとして働かせるためには、義定が無事に帰るまで仙千代を手放すわけにはいかなかったのだ。
高階の事情は、朝頼にもよく分かった。
同情はするがのう……しかし、このまま尾張の地を蹂躙させるわけにはいかんのよと、朝頼は思う。
松川に恭順すれば、今の高階家の姿は、明日の我が津田家のものとなる。
恭順せず、討ち果たされたら、津田家は終わる。
「殿! いかがいたしましょうか?」
重臣達が、激しく言い募る。
皆、明確に指示を出さない朝頼に焦れていた。
松川義定上洛の報が入ってから、今ま朝頼は何の動きもしない。せいぜいが、砦の備えを厳重にせよと命じるくらいだ。
策がないのか? と家臣たちは訝しんだ。
確かに、この状況家臣の誰もが、恭順する以外に道はないと思っていた。しかし、それを朝頼に言えるものはいなかった。
自分達も、高階の家臣達の境涯に落とされるのは、避けたいとの思いもある。
しかし、それにはどうすれば……。
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