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第81話 13章 松川滅亡

 久世の軍勢は、朝行の軍勢に合流した。 「武蔵守(久世の官職)此度はよろしく頼みます」 「中将様(朝行の官職)私の方こそお供叶い、光栄にございます」 「わしの配下は若い者が多い、その分血の気は多いのじゃが、武蔵守には学ぶことが多いと思っております」 「若さは特権でございます。攻め入る時、血の気の多さは、大いに役立つことでしょう」  朝行は、討伐軍の編成は父の配慮と感謝していた。朝頼の配慮には違いないが、そこに至る経緯までは知らない。  朝行にとって、久世は好感の持てる武将だった。久世以外の重臣達は、父と同じか、それよりも年上。若い朝行には、古臭く、堅苦しいと思う者が多いのだった。  しかし、久世は違った。年も未だ若く活力にあふれている。嫡男の朝行にとって、兄とも思える存在、それが久世だった。そんな久世が、副大将として補佐してくれる、率直に嬉しいと思っている。  事実、先陣を任された若き武将たちは、勇躍勇み立ち、次々と松川の砦を破っていった。  砦を破って行けば、次は支城とも言える小柳城。さすがに城は、砦とは違うと思ったが、これも簡単に落ちた。 「これほど簡単に落ちると、あっけないと言うか、張り合いがござらん。もう少し手ごたえがないと」 「我が方の大軍に恐れをなしたのでしょうな。上様の御威光が、誠大きいと言えますな」 「ここを落とせば、松川は裸になったも同然。一気呵成に攻め入りましょうぞ」 「小柳城が落ちた……」  支城が落ちた知らせを聞いて、義政は、呆然として言葉がない。そこが落ちれば、残すはこの城だけ。 「竹原は、義兄上は、援軍を送って下さらんのか……」 「何度も要請の書状を送っておりますが……ともかく、お方様を甲斐まで送り届けましょう。そして、直接援軍をお願いしていただくよりほかはございません」 「そうじゃな、そうするしかないな」  義政の正室、竹原信秀の妹は、少ない家臣を共に実家の甲斐へと向かった。  彼女は、兄に会うなり、夫と息子を救うための援軍を願う。その妹の願いを、信秀は、生返事でごまかしながら黙殺した。  今の竹原家に、松川を救う力はどこにも無い。それが全てであった。この情勢では、松川の滅亡は目前。そうなれば、次は甲斐。  実際、竹原は信秀の正室の縁を頼りに、小田原に援軍を要請していた。つまり、他家に援軍出すどころか、こちらに援軍がいる。そういう逼迫した情勢だった。  来るはずもない援軍を待つ。義政にはそれしか出来ないでいた。  まともな情勢判断が出来れば、竹原にその余力はが無いことは、容易に判断できることだった。しかし、義政にはそれができない。  残っていた家臣達も、更に少なくなっていた。危機を前に、何もできない、ただおろおろするのみの、頼りない主を見限って出ていったのだ。  逃げられるうちに逃げる、そう考えた者は多い。事実、津田の大軍勢は、ひたひたと近づいている。完全に囲まれれば、逃げることは叶わない状況にきていた。

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