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想いの変化18
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絵里さんにリクエストされた曲を弾きながら、カウンターにいる石崎さんをチラッと見る。
白いシャツの上に黒いベストを着こなし、背筋を伸ばしてリズミカルにシェイカーを振る姿が格好よくて、素直にいいなと思えた。
『聖哉の大事なところを激しくシェイクして、ミルクを出してもいいんだけどさ』
不意に今朝のやり取りが頭の中に流れたせいで、左手に力が入ってしまい、大事なところでとちりそうになった。
(――ダメダメ、リクエストされた曲に集中しなきゃ!)
小さく頭を振って、黒と白の鍵盤に視線を縫いつける。昼間したコンテストの練習で集中力を使ったせいで、気を抜くと雑念が頭の中を支配しかける。
「僕はいつもどおりに、ピアノを弾いていただけだったのに――」
卑猥なことを頭から追い出すべく、コンテストの練習中に言われたことを思い出してみる。コンテストの練習を見てくれるのは父の弟で、僕にとっては叔父さんにあたる。
ちなみに父方の家系は、そろってピアニストを生業にしている。僕以外の親戚はみんなコンテストで入賞したり、プロとして華やかに活躍している人が多かった。
どこまでも平凡な僕がどんなに頑張っても、彼らのようにはなれない。だって、才能がないのだから――。
それでもダメもとで、毎回コンクールに出場している根性は、誰にも負けないつもりだった。
そんな負けず嫌いを発揮しながら、コンクールの課題曲を叔父さんの家で弾いていたら、途中でとめられてしまった。
「聖哉、おまえこれまでいったい、どんな練習をしてきたんだ?」
「……いつもと変わりませんけど」
叔父さんからの唐突なダメ出しに、気落ちしながら率直に答えた。
「確か夜にバーで、ピアノを弾いてるとか言ってたよな。なんの曲を弾いてる?」
「お店の雰囲気に合わせているので、ジャズクラシックが多いです」
僕と端的なやり取りをした叔父さんは、険しい表情で頭を抱えた。
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