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第14話:近藤先生は可愛がられたい
「・・・頭イテ」
近藤 貴俊は頭痛のする頭を抱えながら目覚めると。
そこはラブホであった。
今まで恋人もいなかった近藤にとってはドラマの中でしか見た事のない異世界のようだった。
というか、今のこの状況が異世界だ。
なにせ自分は裸で、尻が痛い。
そして、
「ん・・・」
隣には金髪のガタイのいい男が眠っている。
顔が綺麗な奴は寝顔も綺麗だな・・・
などと感心していると、
「ん?」
その顔をよく見ると、どうやら知っている奴らしい。
というか、まさか・・
「おはよ、先生」
近藤と同じベッドに横たわっているその男は、
自分の教え子である高梨 咲也だった。
咲也は彼の反応で何となく察する。
「もしかして、昨日の記憶ない感じ?」
「・・・」
近藤は黙っていた。青ざめながら。
咲也は頭をカリカリと掻いてベッドから起き上がり、
「説明しても良いけどさ、先生急がなくて大丈夫?」
「え、あっ!」
時計を見ると、もう6時半。
「やべ!家帰って着替えないと・・・」
慌てて身支度をする近藤。
サイドテーブルにお金を置き、
「高梨!とりあえず詳しいことは後で聞くから!」
「はいはい」
急いでホテルを出る近藤を見送る咲也。
ホテルで一人きりになり、咲也は昨日の近藤を思い出しながら、自分の股間を撫でる。
「あー・・・、抱き足りねぇ」
そうつぶやいて、シャワー室に向かった。
放課後、
「高梨、生活指導室にこい」
教室でそれぞれが帰る支度をする生徒の中で、近藤は咲也を呼びつけた。
「はーい」
咲也は軽く答えて席を立つ。
「咲也ー、お前何したの?」
「別にー?」
などと、クラスメイトと軽口を交わしつつ、
咲也は近藤の待つ、生活指導室へと向かった。
険しい顔をした近藤の向かいの椅子に、咲也はドカッと腰掛けた。
その態度のデカい教え子をじっと見つめる。
金髪の短髪、耳に複数のピアス。顔はおそらく外国の血が混ざっている様に見えるくらい堀が深い。まるでモデルの様だった。
ふと、昨日の記憶が細切れに蘇る。
筋肉質の裸体で自分の上に乗り上げ、
『きもちいだろ?』
と良い声で言ってくる。
(やばい・・・少し思い出してきた)
貴俊はふと、彼から目をそらしながら、
「昨日の事だけど・・・」
もごもごする彼に、咲也は呆れ顔で、
「先生さ、昨日の事覚えていないんでしょ?」
「うぅ」
「ウォッカ一杯で伸びやがってさー、だいたいゲイバーは初めてだったの?」
ゲイバーというキーワードに、貴俊ははっとして、
「そうだ!そもそもお前何であんな遅い時間にあんな場所に」
「バイト」
「バイト!?危ないだろ!何でそんな所で・・・」
綺麗事をいう教師に、咲也はイラッとして、腕を組みながら顔を背け、
「バイト自体は学校には許可を貰ってマス」
「あんな店だとは言ってないんだろ?」
「言うわけ無いじゃん」
「危ないだろ」
「うざ。話がそれだけならもう教室戻るけど」
そう言って席を立とうとする咲也を、
「ち、ちょっとまて!」
「失礼シマース」
そういって生活指導室を出ようとした咲也だったが、
ふと、振り返り、
「そう言えば先生大丈夫?」
「何が」
「ケツ」
その一言に、貴俊は思考をグルグルさせて、
ボッと赤くなる。
その貴俊の反応に、咲也はふっと笑いその場を去った。
あの口ぶりからすると、どうやら本当に自分は咲也に抱かれたようだった。
それを口にはしづらいし、覚えてないというのも言いにくい。
貴俊はさらに頭を抱えた。
その夜。
貴俊は咲也が心配になり、下校した咲也を尾行した。
学校を出てからコンビニに寄り、あのゲイバーに出勤していった。
しかしどうする・・・?
咲也が出てくるまで待つか、それとも客として潜入するか?でも前みたいに酒を飲まされたら潜入した意味がないし・・・
などとゲイバーの斜め向かいのコンビニの前で、悩んで数時間が経過した。
「あら?もしかして近藤?」
と、後ろから声掛けられて振り返ると、身長2メートル近くはある大柄の男がメイクをして派手な柄のピタッとした服を着ている。こんな知り合いはいない。
「やだぁ、やっぱり近藤じゃない?あんた全然変わってないわねぇ」
「え?あ、あのどちら様ですか・・・?」
貴俊はビクビクして後退る。だが、その大柄オネエは平然と、
「私よ、中学の時の同級生の剣持 勝己よ」
「剣持・・・」
「ヒョロメガネ」
「え!」
確かに中学の同級生で、ひょろひょろでいつもいじめられていた男子がいた。確かに顔には面影がある。
「剣持か、久しぶりだな。・・・ずいぶん変わって・・・」
と、大柄オネエをマジマジと見つめ呟いた。すると勝己はポッ赤くなり、
「そんなに褒めないでよ♡」
「ええ・・・うん。でも元気そうで良かったよ・・・」
確かに良い方に?変わってて良かったと思ったが、
「そういえば、近藤はこんな所で何してるの?この辺はあんまり評判の店ないから気をつけた方が良いわよ」
「そうなの?」
「ええ、特にあの店はこの界隈で1番評判が悪くて」
と、勝己が指さしたのは咲也が入っていった店だった。
「評判悪い?」
「そうね、この間従業員が警察に密告したせいで強制捜査入って・・・」
と、勝己が説明をしていると、
「このクソガキが‼」
ガシャーン‼
見張っていた店から、一人の男が店のドアから外に投げ出されてきた。
ドアのガラスが半分割れている。
投げ出された男は咲也だった。
「高梨・・・‼」
「知り合い?」
「俺の教え子だ!」
「え、ちょっと近藤!」
答えてすぐに貴俊は駆け出していた。
「ツラがいいからまだガキのお前を置いてやってたのに、サツにリークしやがって!店畳むことになったじゃねえか!どう落とし前つけてくれんだコラ!」
と、ガラの悪い中年の男が地面に尻もちをついている咲也の肩を蹴る。
痛いが声を出すこと無く、咲也は傷だらけの顔で、
「ざまあみろだな、オッサン」
ニヤッと笑みを浮かべる。
「このっ!」
中年の男が、今度は咲也の顔を目掛けて蹴りあげようとした時、
ガツッ
「うぐっ」
「!」
咲也は衝撃はあったものの、痛くない・・・と思い目を開けると、自分の上に覆いかぶさる人物がいて驚いた。
「センセ!」
見ると咲也の頭を抱きしめ男からかばっていた貴俊がいた。
背中を蹴られて、咲也に脱力してもたれかかる。
男も驚き、
「な、なんだてめえは!?」
貴俊はズキズキする背中を必死でこらえて、男の方を睨む、
「っこのコの担任ですが」
「先公だと?」
「そうです」
「だったらその生意気なガキを教育してやれ!こいつは拾ってやった恩を仇で返しやがったんだ!身寄りがいないからと住み込みで学校には内緒で働かせてやったのに、サツに売りやがって」
などという男に、
貴俊は咲也の頭をぎゅっと抱きしめて、
「警察に言ったのは、あなたが悪いことをしているからでしょ?このコは正しいことをしている。それに子供を守るのが大人の義務です」
「なっ、なまいきなっ」
と、男が再び足を上げようとすると、
「もう、よしなさい」
と、貴俊達と男の間に割って入る、勝己。
急に大柄な男が割って入ってきてびっくりする中年の男。
「なっ」
「これ以上やってもあんたが虚しくなるだけよ。こいつは正論しか言わないし」
「くっ・・・」
男は引き下がり、咲也をきっと睨み、
「荷物まとめて出ていけよ!クソガキが!」
といって、バンッと逃げるように店に入っていった。
「ふあぁ」
男がいなくなって、貴俊は咲也の上に脱力して倒れた。
「ちょっと先生、何してんだよ!危ないだろ」
「・・・」
「え?先生?」
気が付くと貴俊は気絶していた。
咲也は自分を身を呈して守ってくれた先生をぎゅっと抱きしめた。
「お人好し・・・」
「そうね」
それに答えたのは、勝己だった。
咲也はびっくりして彼を見上げる。
「あやしいもんじゃないわ。近藤の知り合いの勝己よ」
「へえ・・・」
「こいつ、あんたの事心配して私と一緒に、一部始終見てたわよ」
勝己は気絶している貴俊を軽々と担いで、
「うちの店この近くだから。とりあえず、あんたは自分の荷物持ってきな。近藤も運ばなきゃいけないし」
「あ、はい」
勝己の気迫に咲也は慌てて自分の荷物を取りに店に戻った。
あの店からは少しだけ離れた場所に、
勝己の店「アンダー」があった。
今日は定休日だったらしく店は人の気配はない。
勝己は貴俊を大きなソファに寝かせ、うつ伏せにさせて貴俊のシャツをぐいっと上げ、背中に傷がないか確認する。赤くなっているが傷はないようだ。仰向けにさせてそのまま寝かせる。
勝己は流しで一枚のタオルを濡らして、戸惑う咲也に、
「咲也だっけ、突っ立ってないでタオル近藤の頭にのせてやって」
「はい」
咲也は濡れたタオルを受け取り、気を失っている貴俊のすぐ側に腰掛けタオルを目から頭に掛けてやる。
そのままじっと自分の担任を見つめた。
こんな人は初めてだった。
身を呈して自分を守ってくれた大人は。
あの夜、酔った貴俊を抱いたのは、自分を求めてくれたから。
甘えてくれたから。
さっきも自分の身を呈して守ってくれた。
怪我をするのは分かっていたのに。
「馬鹿な奴」
そうつぶやいて、貴俊の頭を撫でる。
「好きなのね」
その声に、我に返り勝己に目をやる咲也。
勝己はくいっと顎を向ける。
貴俊の事言っているのだと気がついて咲也は、
「別に」
と、貴俊の頭から手を放す。
「別に好きでもいいとおもうけどね」
「好きって言えるほど、関わりはない」
「ふうん」
肩をすくめる勝己。
「ん・・・」
貴俊はゆっくり目を開けた。
「あら、大丈夫?」
「・・・剣持。って、高梨は!?」
とガバッと起き上がる貴俊。
「いるわよ」
勝己の視線を追うと、自分が眠っていたソファの頭のすぐ側に咲也は脱力して眠っていた。
いつもはイケメンな顔がバンソーコーだらけになっていた。勝己が手当をしてくれたらしい。
「あんたが起きるのずっと待ってたのよ」
「・・・そうか」
ぐったりと眠っている咲也の頭を撫でる。
あの男が言ってた。
身寄りがないから置いてやってたって。
(頼りに出来る大人が周りにいないのか・・・)
愛おしそうに彼を見つめる貴俊を見て、
(この2人無自覚なのね・・・)
と察するのだった。
翌朝。
「ん・・・」
咲也はふと目を覚ますと、知らない部屋の知らないベッドの上で寝ていた。そして隣には、自分の先生である貴俊がこれまた無防備にすやすやと眠っていた。
身を呈して自分を守ってくれたあの時は何にも負けないという頼もしい顔をしていたのに、今はまるで子供のように気の抜けた顔をしている。
(かわいい・・・)
咲也は上半身を起き上がらせ、貴俊に覆いかぶさりチュっとキスをする。
甘く優しく。
「ん・・・」
気持ちいい顔をする貴俊に、咲也は彼のシャツの中に手を入れて、乳首を弄る。
「・・・あっ」
やらしい声を漏らす貴俊。これは止められるわけない。
咲也は貴俊の乳首をいじりながら、彼のパンツの中から朝勃ちしている硬くなった股間のモノを取り出ししゃぶる。
「あっはっ・・・、ち、ちょっと!」
感じながらも途中で目を覚ます貴俊。
自分のモノをしゃぶっているイケメンの教え子をマジマジと見つめ、
「何やってんだよ!馬鹿・・・あっ」
彼が話すのを聞きながらもしゃぶるのを再開する。
「ひゃんひゃよ、ひぇんへい(なんだよ、せんせい)」
「咥えながら喋るな!ああっ」
講義しながらもしゃぶられて気持ちよくなる貴俊。
「あっはっ・・・あん」
喘いで、ビクッとイッてしまう。
咲也はティッシュでその精液を口から出し、
「・・・濃いな」
「やめなさい!」
真っ赤になり咲也の頭をペチッと叩く。
「てか色々質問あるんだけどさ」
「ああ、そうだな」
貴俊は頭を掻きながら、ベッドから起き上がった。
今日は土曜日。
貴俊は昼から学校に出社するため起きなくてはいけない。
眠い眠いという咲也を引っ張りようやく2人は1階の勝己の店に降りた。
そこには朝食を作っている勝己がいた。
「あら、おはよう。2人とも昨日はお疲れ様」
「おはよう」
「・・・おはようございます」
「カウンターに座って。朝食食べるでしょ?」
と、勝己はホットサンドとサラダを2人に用意した。
2人が席に着いたのを見守って、
「コーヒーでいい?」
「うん」
返事をする貴俊の隣に座る咲也の顔を見て、
「コーヒー以外なら、紅茶も麦茶もあるけど」
「じゃあ麦茶で」
咲也の言葉に、勝己ははいはいとうなずく。
食事を終えて、
「それでさ、君・・・咲也って呼んでいい?」
「はい」
一応了承を得て、勝己は咲也の下の名前を呼んだ。
「あんたこれからの事決まってるの?」
自分が住み込みで働いている職場の悪事を警察にリークして追い出された。
身寄りもいないし、宛がない。
「・・・」
咲也は黙った。
自分は考えるには子供過ぎた。
それが情けない。
「咲也さ、しばらくうちで働かない?」
「え」
勝己の提案に、きょとんとする咲也。
「もちろん住み込みで。食事も付けるし。うち従業員少ないから雑用が多いけど、コンビニのバイトよりは給料出すわよ」
「でも」
戸惑う咲也に、勝己はちらっと貴俊を見て、
「一応健全な飲み屋だし、今更変な店で働くよりいいでしょ?それにここにいる方が、センセイも安心するでしょうし?」
と、勝己はウィンクする。
「いいのか?剣持」
不安そうに勝己を見る貴俊。
勝己は、ふっと笑い、
「あんたが言ったのよ。子供は大人が守らなきゃいけなって」
「・・・うん」
しっかりと頷く貴俊に、咲也の胸がざわつく。
「ありがとう、剣持」
「いいわよ、もう関わっちゃったんだもの。あの時偶然だけどあんたと再会したのもきっと縁よ」
見た目と同じく大きい心を持ってるんだなと思った。
貴俊はふと、中学の時の剣持を思い出した。
クラスのカーストグループにいつもいじめられていた黒縁メガネでガリガリの少年。しかしどんなにいじめられても、けして学校を休むことはなかった。貴俊はそんな勝己が強い奴だとおもった。
けしてくだらない奴らを正面から相手にしないような奴だった。
ーーーーある日勝己は、
持ってきた弁当をカーストグループに捨てられて仕方なく、昼飯を抜きで屋上で一人勉強をしていた勝己に、貴俊は自分のおにぎり弁当を差し出した。
「・・・なに?」
「食べる?」
「君のお弁当だろ」
「弁当持ってきたの忘れて、パン買っちゃったから」
「じゃあパンくれよ」
「俺今パンの口だからダメ」
そういいながら、おにぎり弁当を勝己に押し付けて、
自分は彼の隣に腰掛けパンを食べ始める。
勝己は黙って、貰った弁当を開けた。
海苔のついたおにぎりが2つ。小さい使い捨てのプラスチックの入れ物に唐揚げと卵焼きとミニトマト。そして割り箸。
「いただきます」
勝己は手を合わせてその弁当を食べた。
その彼を見て、ホッとする貴俊。
会話は別にない。
でも、甘い卵焼き、味のしみた唐揚げ、ツナと梅のおにぎり。
その全部の味を噛み締めた。
ちゃんとしたご飯を食べたのは久しぶりだった。
家では両親は忙しく、勝己はいつも一人だった。テストの点数が良くても、満点でなくては1時間も2時間も説教をされた。
お前は負け犬だと。
「ご馳走様でした」
「卵焼き甘すぎなかった?」
「うん、って・・・このお弁当近藤が作ったの?」
「まあね、高校生になって親に作ってもらうのって悪いじゃん。おれ料理好きだし」
「すごいな」
「普通だよ」
平然と答える貴俊。
「やればできるよ」
そう言った貴俊の顔は真っすぐで、
『やればできる』
いじめに負けるなと言われているような気持ちになった。
「うん」
勝己はしっかりと返事をした。
その次の日から、勝己は肉体改造ををし始めた。
勉強も今より頑張って、
いじめは極力無視した。
そうしていると、いつしかいじめはなくなった。
勝己は高校に入るとラグビー部に入りその後主将になり全国大会で優勝した。ラグビー部に入り自分がゲイであることに気がつき、大学卒業して家を出て夜の街で働くようになった。
何にせよ実は勝己も貴俊に救われた一人だったーーーー
「勝己さんよろしくお願いいします」
と、咲也は頭を下げた。
「ふうん」
勝己は品定めするように、咲也を見て彼の顎をくいっと持ち上げた。
「なかなか良い男ね。食っちゃいたいくらいだわ」
「こら、手は出すなよ」
半眼で睨む貴俊に、勝己は肩をすくめて、
「いやねぇ、あんたの男には手は出さないわよ」
と、ニヤニヤする。
「は・・・っな!教え子だからだよ!」
赤くなって否定するが説得力がない。
それに咲也も、
「素直じゃあねーな」
「ねぇ?」
賛同する勝己と咲也を置いて、
「出勤するからもう行くな!ごちそうさま!」
慌てて勝己の店を出ていった、貴俊。
言えるわけない。
自分の教え子の顔が、めちゃめちゃ好みなんて。
そして少しだけあの夜の記憶が断片的に思い出してきていた。
さっきフェラされた時に、
後ろに挿れられて腰を打ち付けられた事、
あのカッコいい顔に何度もキスした事、
それを思い出した。
そしてその時の事を思い出す度に身体が疼いて、毎晩一人で家でシていた。
認めたくないが、
貴俊は咲也の事が好きだ。
でも自分は彼の担任。
それを認めるわけにはいかない。
そのころ勝己と咲也は、
「それにしても、なかなか良いフェイスしてるわね」
咲也の顔をマジマジと見つめる勝己。
「美容院行くわよ」
「え?」
「そのままじゃ店に出せないし。私が魔法をかけてあげる♡」
半ば強引に勝己は咲也を美容院へと連れて行った。
その夜、
貴俊は咲也の様子を見るために、再び勝己の店を訪れた。
昨日は休日だった店もきらびやかにネオンが点いていた。
Bar『アンダー』
店内に入ると、そこには相変わらず派手な勝己が、
「あら、いらっしゃ〜い」
と貴俊を見て手を振るカツミママ。
店内には常連の数人の客と、チーママ恵子さん(中年)が一人。オネエ店員のタダシが一人。そして・・・・
「いらっしゃいませ」
そう言って、ボーイの格好をした咲也が現れた。
「!」
その彼に驚く貴俊。
中途半端に伸びた金髪だったが、
ちょっと茶髪と混ざった金髪に変えて髪も短く整われている。
そのおかげでただでさえ男前なのに、さらに磨きがかかってイケメンになっていた。顔にはまだ数か所バンソーコが貼ってあるが。
見違えるくらいカッコよくなっている咲也に貴俊が見惚れていると、
「ちょっとー、近藤センセ」
「へぁ!?」
「見すぎ見すぎ」
「あっ、いや・・・」
カツミの声にハッとして慌てる貴俊。そんな彼を見て、
「ふっ」
咲也が吹き出した。
「何だよ、その反応。可愛すぎだろ」
笑う顔を見て、貴俊は胸が苦しくなる。そして嬉しくなった。
彼が一人じゃないことが。
笑っていてくれる事が。
「いいじゃん。かっこいい」
貴俊はちょっと照れながら、彼に伝える。
そのしぐさに、咲也もちょっと照れる。
そんな2人の初々しさに、
「ちょっとー、店内でイチャ付かないでくれますー?」
『してない!』
カツミのツッコミに、貴俊と咲也は声を合わせて抗議した。
客として、咲也の働きぶりを数日見守っていた貴俊。
日に日に接客に慣れて、色々な表情を見せてくる咲也に心動かされながら、
自分は教師である事を言い聞かせた。
「センセー、何飲んでるの?」
店が終わり、カウンターでひっそりと店内を見守っていた貴俊に気がついて、咲也は彼のグラスを覗き込む。
「ジンジャーエール」
「たまには酒飲めば?」
「俺酒弱いから飲んだら帰れなくなるし」
「明日日曜じゃん」
酒を進める咲也に、カツミは乗ってきて、
「そうよね、いざとなれば咲也の部屋に泊まればいいんだし♡」
その言葉に、貴俊はドキッとする。
「ばっ、馬鹿言うな」
その明らかな反応に、カツミは面白がってニヤニヤして、
「そんな事言ってぇ、近藤ってば咲也の顔好きじゃん」
「なっ」
ズバリ言い当てられて大きな反応をする貴俊。
それに驚いたのは咲也だった。
「そうなの?」
本人に聞かれて、貴俊はカッと赤くなり、
「……」
「まあまあとりあえず飲みなさい」
と、カツミは新たなグラスを貴俊に差し出す。それを照れ隠しで奪い、ぐいっと飲み干す。
ぐるぐると酒が回って、
「うう〜・・・」
カウンターに突っ伏した。
「あら、本当に弱いのね」
カツミはそれほどだとは思わず、目を点にする。
咲也は貴俊を担ぎ、
「上行っていい?」
「あがっていいわ。けどこいつ大丈夫?」
「酔うとセンセーって、可愛くなるからね」
ふっと笑う咲也に、
カツミはやれやれと肩をすくめる。
2階に続く階段を上がりながら、
貴俊は咲也の首にしっかりと腕を回し、
「ん〜・・・イケメン2倍増しでムカつくなー」
「はいはい」
酔っ払いの言葉は無視して、廊下を歩く咲也。
相手にされず貴俊はムッと不機嫌になり、
「このぉ」
咲也の首にちゅうっと口を吸い付ける。
「ちょっと」
軽口で抗議しながら、
2階の自分にあてがわられた部屋のドアを開けて、
ぐったりとした貴俊をベッドにゆっくり寝かせる。
「ん・・・」
貴俊はボーッとしたまま、うっすら目を開ける。
「センセー、水飲む?」
そういってペットボトルの水を渡そうとする。が、
「飲ませて」
甘えた声で貴俊は咲也におねだりする。
それに、あの夜の事を思い出す。
あの時も貴俊は咲也に甘えてきた。
それが可愛くて、
彼のおねだりに答えた事で身体を重ねた。
(魔性だな)
そう思いながら、咲也はペットボトルの水を自分の口に含んで貴俊の口に自分の口移しで水を飲ませる。
「気持ちいい・・・」
酒でぽーっとしたままの貴俊は咲也の胸を抉るくらいに可愛くて、困ってしまう。
「もう寝ないと、襲うぞ」
そういって咲也は貴俊を寝かせようと、自分はベッドから降りる。
しかし貴俊は咲也の腕を引っ張って、ベッドに押し倒す。
貴俊は咲也の上に馬乗りになり、自分の服を脱いでいく。
細身で色白の肌が顕になる。そのまま咲也のシャツも脱がしていく。
貴俊は筋肉質の咲也の肌を撫で回し、
「早く抱けよ」
咲也は頭を押さえる。
「あっあっ」
乳首を舐めながら、後ろに出し挿れしてやると何度も喘いで貴俊はすぐイッた。
咲也がイッた時には貴俊はぐったりしてすぐ眠りについた。
(人の気も知らないで・・・)
咲也はTシャツとハーフパンツに着替え、貴俊にも身体を綺麗にしてやってから、Tシャツとスウェットズボンを貸してやる。彼にはやや大きいが。
仕方なく同じベッドに横になると貴俊は咲也にぎゅっと抱きついてきた。
そのままスヤスヤと眠りに付く貴俊。
その彼の頭を撫でる咲也。無防備な彼の寝顔を見つめながら、
今の自分は、
過去の自分が想像できない状況にあった。
咲也は幼い頃からひどい環境で育った。ギャンブル好きな両親は日常的に実の子である咲也に暴力を振るっていた。そのうち破産した両親は幼い咲也を置いて、夜逃げした。
その後2人は海で帰らぬ人となっている所を発見された。
咲也は養護施設で育ち、
中学3年からあの店で住み込みで働くことになった。
そこでも人間のような扱いはされなかった。
まるで奴隷のように扱われ、給料も半分はオーナーに取られた。
出ていく事も出来ない状況で、
ある日貴俊があの店に現れた。
ゲイバーと知らずに入ってきたのかと思ったが、
男との出会いを求めていることに気がついた。
そのうち、一緒に飲んでいた相手に酔い潰されてお持ち帰りされそうになった時咲也は声を掛けた。
相手の男に何か言う前に、実は貴俊はその相手にゲロを吐き、自分で撃退したのだ。咲也はそのまま貴俊を返すことも出来ず仕方なくホテルに置いて帰ろうとしたが、さっきのように甘えられて、抱いていしまった。
酔った貴俊は全力で咲也に甘えて抱いてとしつこかったため、仕方なく抱いたが身体の相性が良くて、めちゃめちゃく持ち良くなった。
その可愛さに好きになった。
頼る大人もいなかった子供の自分が、
年上のましてや自分の担任に、同じベッドで甘えられている。
自分に甘えることで、安心してスヤスヤと眠る貴俊。
その寝息を聞くだけで、咲也の眠気を誘う。
ウトウトとし始め、咲也は貴俊の額にキスをした。
そのまま彼の頭に顔をスリスリさせる。ずっとくっついていたい。
すると、
「咲也」
小さく呟く貴俊。どうやら起きてしまったようだ。
「悪い、起こしたか」
咲也は彼をあやすように、おでこにキスをする。
すると貴俊は、顔を咲也に向けて、
「おでこじゃなくて、口にして」
「!?」
なんて言ってくるもんだから、驚いて咲也は上半身を飛び起きる。
「何言ってんだ、あんた」
あまりに甘えた声でいうもんだから咲也は照れた。
通常とはまるで別人な貴俊に本当に二重人格ではないかと疑うほどだった。
でも、違う。
貴俊は普段真面目な性格なため、酔うとタガがはずれてしまうんだと思う。
でも・・・彼は起きると覚えてない。
だったら、
「早く」
促されて咲也は躊躇いながらも、貴俊にくちづけをした。
「ん・・」
もう放したくないくらい、甘くて全身が気持ちよくなる。
キスをして、貴俊は咲也の首にちゅっちゅっとキスをしていく。
「ちょっと・・・」
慌てて止めようとする咲也に、
「もっと」
「あんたどうせ明日起きたら覚えてないだろ」
と、吐き捨てるように呟く咲也。
どんなに好きでも、抱き合っても、
酔っている時しか求められない。
そんなのむなしいだけだ。
「・・・記憶はなくても身体は覚えているよ」
「え」
「朝記憶がなくても、夜になると身体は疼くんだよ。お前の熱とか形とか覚えているんだ」
その言葉を聞き終えるより早く、
咲也は貴俊を抱き締めていた。
「・・・咲也?」
「あんたってほんとずるいよな」
彼のその言葉が嬉しくて堪らなかった。
(覚えてないくせに)
甘いキスを何度かして、
貴俊を抱きしめながら咲也は眠りについた。
咲也は来年高校3年になる。
カツミの店にも慣れて、
卒業したら自立も考えていた。
自分の境遇では大学進学は叶わないが、せめて高校はきちんと卒業したい。
いつしかそう思っていた。
卒業したら、貴俊に告白をしようとおもっていた。
そんなある日、貴俊に職員室に来るように言われ、ドアの前まで来て咲也は動きを止める。
「そういえば、近藤先生あの高梨と最近つるんでるんですって?」
他の先生の言葉が聞こえ、どきっとする。
自分の話をしている。
緊張が走った。
「つるんでるというか、最近彼がんばってるので気にかけてはいます」
「そうですか・・・でも気をつけてくださいね」
「え?」
「彼生まれもアレだし素行が悪いでしょ?」
嫌な言い方をする大人だなと咲也は思った。
しかしすぐさま貴俊は、
「そういう言い方はないでしょ。子供は親を選べないんですから」
真っ直ぐな声で貴俊は言い返した。
「それに担任として、卒業まではきちんと見守るつもりです」
その言葉に、
咲也は、背筋がすっと冷たくなった。
担任だから、卒業まで見守る。
当たり前のことなのに、咲也は自分が馬鹿みたいだと思った。
今のこの幸せが永遠なわけがない。
卒業したら、貴俊と繋がりがなくなる。
無関係になる。
そんなの始めからわたってたのに。
咲也は黙って職員室を後にした。
時刻は午後8時、
貴俊はカツミの店を訪れた。
「ちょっと、咲也見なかった?」
「え?」
「帰ってきてないのよ」
そのカツミの言葉に、
「俺その辺見てくる」
鞄を置いてそれだけ言って駆け出していった貴俊。
「ちょっと・・・」
カツミの声は届いて居なかった。
そのころ咲也は、
ふらふらと街中を彷徨っていた。
今更何をショックを受けてるんだ。
もともと人は一人じゃないか。
「よう、クソガキ」
誰かが後ろから声を掛けられ、
「え?」
振り返った途端、
ゴッ!
何かが咲也を襲う。
後頭部を殴られたのか、激痛が走る。
地面に赤いシミが広がる。
血だ。
ふと後ろを振り返ると、
「ずいぶん調子に乗ってくれたな」
もとの店のオーナーだった。
ただ全身ブランドだった頃とは違い、今は地味でボロボロの服をきていた。
その男は殴られてクラクラしている咲也の髪を鷲掴みにして彼を起き上がらせる。
「お前のような忌み嫌われて育った子供はな、誰かに愛されるなんてかんがえはもつなよ。無駄なあがきだ」
侮蔑の表情で咲也を睨む男。
そんな現実、痛いほど知ってる。
咲也は勢いよく頭を前に突き出して、男に頭突きした。
「ぐあ!」
男は不意をつかれ、悲鳴を上げて地面に尻もちをつく。
咲也は頭から血を流しているが、それを気もせずゆっくりと立ち上がり、
「調子に乗ってるのはお前だろオッサン。あんたが店で怪しい事をしていることは気がついていた。ほんと馬鹿な大人だと思ったよ」
その咲也の声にかぶさるように、パトカーの音が近づいてくる。
咲也は黙ってスマホを画面をやつに見せた。
110番に通話中だった。
「おまえ!」
男が咲也に掴みかかろうろすると、
「そこまでだ!」
大勢の警察官が男を取り押さえた。
「くそぉ!覚えてろクソガキ!」
「うるせぇ!何度来てもブタ箱にぶちこんでやらぁ!」
連行されていく男を見送って、
「はあっ」
脱力して地面にへたりこむ咲也。
「高梨!」
「せんせ・・・」
言いながら咲也は倒れて、意識が遠くなっていく。
「ん・・」
「高梨!」
気が付くと、咲也は消毒の匂いがする部屋のベッドで眠っていた。
心配する貴俊の背後をを見て、ここが病院であることに気が付く。
頭の傷は手当されているようだ。
目の前には不安そうな貴俊の姿。
この人は、いつもそうだ。
自分より俺を心配する。
それが嬉しくて、
いつしか勘違いしてた。
「とりあえず明日には退院できるそうだから」
「うん」
咲也は彼から目をそらす。
「帰っていいよ、センセ」
ぶっきらぼうにそう言われ、
貴俊は黙る。
「そんな言い方するなよ」
疑問に思って問いかける。
「何で今日職員室来なかった?」
咲也は黙った。
しばらくの沈黙の後。
「俺のこと、もう構わなくていいよ」
「え?」
明らかな拒絶。
貴俊は、その先の言葉が知りたかった。
「どうせ卒業したら先生は、俺のこと忘れるだろうし」
その言葉を聞いて、
職員室での話を彼が聞いていたことに気がついた。
「聞いてたのか」
「だからもういいって」
吐き捨てるような咲也の言葉に、
貴俊は迷ったが、
取り繕うのは止めた。
「・・・そりゃ、職員室ではああ言うしかないだろ」
「・・?」
咲也はその言葉の意味が分からず疑問符を浮かべる。
よく見ると、
貴俊は少しだけ照れた顔をして、
「俺はあくまでお前の担任だから、今はその・・・酒の力を借りるしかないし」
もじもじしながら、
「それに、酔ってるときの記憶・・・全くないわけじゃない」
「え・・・!」
咲也は驚いて、起き上がる。
「ばか、寝てろって」
慌てて彼の胸を手で押さえ、ベッドに押し戻して寝かせようとする貴俊。
咲也はその手をぎゅっと握る。
「自分の言ったこと、どこまで覚えてるの?」
「・・・翌朝はあまり覚えてないけど、時間が立つにつれて、・・・6割くらいは」
「あの夜のことも?」
「・・・うん」
「何で言ってくれなかったんだよ」
「言えるわけないだろ。酔うと理性が飛んで思ってること言っちゃうなんて」
「じゃあ全部、酔った勢いじゃなくて本心ってこと?」
期待する咲也の顔に、貴俊は更に赤くなる。
「・・・そうだよ!俺はお前の事好きだ」
「うそ」
「だから卒業したら終わりなんて考えてない」
彼の言葉に、咲也は夢のような気持ちだった。
自分が必要とされるなんて、今までなかったから。
咲也は目に涙をためながら、
「先生の事諦めなくていいの?」
「いいよ」
「卒業しても、離れなくていいの?」
「いいよ」
貴俊は咲也の頭を優しく撫でて、
「というか、離れないでくれ」
「先生好き」
泣きながら告白する咲也。
そんな彼を可愛く思い、
「俺も好きだよ、咲也」
笑って、貴俊の方からキスをした。
「とりあえず無事で良かったわね」
翌日迎えに来た貴俊と共に咲也はカツミの店に帰った。
カツミは傷だらけではあるが表情の変わった咲也を見てホッとした。
「心配掛けてすみません」
軽く頭を下げる咲也。
貴俊はそんな咲也を嬉しそうに見つめ、ポンポンと彼の背中を叩く。
「まあ無事で良かったよ」
その貴俊の言葉に、咲也も嬉しそうな顔をする。
2人の雰囲気が変わった事に、カツミは気がついた。
「どうやら、そっちも落ち着いたようね」
『え?』
生きの合った2人の疑問符に、
カツミは笑った。
とりあえず、貴俊は学校に説明をして、咲也は数日学校を休んだ。
そして自分が監督すると、学校に申し出をした。
数日後、咲也の頭の怪我も治って、
「ようやく、いつものイケメンに戻ったわね」
カツミはほっとしてそう言った。
咲也も頭をさすり、
「とりあえず髪切りに行こうかな」
「そうね」
カツミは席を立つと、
「今日、近藤来るんでしょ?」
「うん」
すると、
「今日お店、臨時休業だから」
「え、はい」
意味が分からず、しばらくカツミを見つめると、
カツミはニヤニヤして、
「あいつのことたっぷりかわいがってやんなさい」
その言葉に、察して赤くなる咲也。
「ちょっと」
カツミはウィンクをして、
「今日は帰らないからー」
と、カツミは振り向かず手をヒラヒラさせて、店を出ていった。
その夜、
「あれ?今日店休みなの?」
貴俊はテイクアウトの食事を大きな袋に入れて、持ってきた。
カツミや従業員の分も買ってきたようだ。
咲也は少しだけ照れながら、顔を背け、
「・・・なんか用事があるから、臨時休業だって」
「なんだ、みんなの分も買ってきたのに。咲也、皆の分は冷蔵庫入れといて」
「うん」
まだよく分かっっていない貴俊。
それさえも、咲也にとっては可愛く感じてしまう。
2人で貴俊が買ってきた食事を食べながら、しばらく沈黙が続く。
「頭の傷はもういいの?」
先に言葉を口にしたのは、貴俊だった。
「うん」
咲也は言葉少なに返事をした。
麦茶で口に入ってる食べ物を無理やり喉の奥に流し込む。
食器の後片付けを2人でし終えて、
貴俊の緊張がピークに達する。
「じゃ、じゃあ俺そろそろ帰ろうかな」
そそくさとドアに向かう貴俊を、
咲也は背後から抱きしめた。
「帰らないで」
優しく囁いた。
その声にドキッとしながら、貴俊は固まった。
でもすぐに咲也方を振り向いた。
咲也はいつものイケメンの顔で、
でも、いつもより真剣な顔で、
「抱いていい?」
「・・・うん」
貴俊はこくりと頷いた。
片付けを終えて、
貴俊は風呂に入り、咲也の部屋へ行くと、
先に風呂に入った咲也が、
上半身裸のままベッドの上に座り待っていた。
それを見るだけで貴俊のドキドキは止まらなかった。
「センセ、こっち」
咲也に手招きされて、
緊張しながらも貴俊は彼の方に向かった。
もう何度も一緒に眠った咲也のベッド。
咲也は貴俊をぐいっと引き寄せ、ベッドに押し倒す。
お互いの視線が絡み合う。
貴俊は急に真っ赤になり、
「ち、ちょっと、待って!」
「なんだよ」
咲也が上に乗ってくるので、貴俊は急に恥ずかしくなった。
貴俊はこれ以上ないくらい照れて彼から顔を背ける。
「酔ってない時にするのは初めてだよな」
「・・・恥ずかしくて無理」
「無理じゃねえよ」
そう言って、咲也は貴俊の首にキスをして、
「覚えててもらわないと困る」
真剣な表情の咲也に、貴俊は観念して彼のキスに答えた。
貴俊は咲也をベッドに押し倒し、彼のガチガチの股間のモノを舐め始める。
「まじかよ」
大事なモノをしゃぶられて感じている咲也を見て、貴俊も興奮してくる。咲也はそのまま貴俊の後ろに指を挿れていく。
「あっん、今やられたら出来ない・・・はっ」
敏感に感じて続きができなくなる。嬉しくなり、十分に解していく。
気持ちよくて貴俊は咲也の首に腕を絡ませ、吸い付くように彼にキスをする。
咲也はそれに答えながらも、貴俊の後ろの良い所を探りながら解していく。
「あっ・・・」
咲也は大切なものを扱うように、
優しく彼にキスをした。
貴俊も素直にそれに答える。彼の甘いキスに。
今はお互いの気持ちが重なり合っている、
そんな気がする。
どこに触れても貴俊は感じるし、気持ちいい。
もっと触って欲しくて、
貴俊から何度もキスをした。
もう、我慢しない。
滑らかな肌も、柔らかい彼のお尻も、
愛おしい。
咲也は大切に愛おしく、貴俊の色白の肌をキスで赤く染める。
彼の後ろをゆっくり解し挿入していく。
「はっ、あ・・」
何度も腰を揺さぶられ、ふとバチッと視線が合い、
貴俊は顔を真っ赤にして視線を逸らす。
「何その反応」
「だって、あっ、恥ずかしい・・・あんっ」
「かわいい事言うなよ」
咲也も照れるが彼のあまりの初々しさに、貴俊の足を広げてさらに奥に挿れいていく。
「んぁ・・そんな奥、おかしくなる・・・」
「もっとおかしくなって」
と、咲也は腰を揺さぶる動きを早める。
「あっあっあっ」
「はあっ、先生好き」
2人同時にイッて、咲也は彼の上で脱力する。
荒い息を吐きながら、
火照った貴俊を見つめる咲也。
その視線に気がついて、
「・・・見るなよ」
そう言って照れながら身を逸らす貴俊。咲也はふっと嬉しそうに笑い。
彼を背後からぎゅっと抱きしめ、
「先生、好き」
少しだけ涙ぐんだ咲也を、
貴俊は優しくだきしめた。
後日、
学校にて、進路相談するために貴俊は教師として咲也を呼び出した。
「で高梨、進路決まった?」
「んー・・・」
言葉を濁す咲也。貴俊は疑問符を浮かべ、
「なんだよ?」
「いや、その・・・」
「はっきり言えよ」
すると咲也はめずらしく言いにくそうに、
「・・・モデルにスカウトされた」
「え?」
聞き返すと、更に照れて、
「だ、だから、雑誌のモデルにスカウトされたんだって」
「え!」
貴俊は驚いて、ガタッと席から立ち上がる。
話を聞くと、こないだ買い物に言った時に、カツミの知り合いの雑誌の編集者と出会い、その時によかったらモデルにならないか?と言われたのだ。
貴俊は最初怪しいのではと思ったが、人脈の広いカツミの知り合いなら変な人はいない。
「すごいじゃないか。咲也かっこいいし出来るよ。あっ、高梨なら出来るよ」
学校では下の名前を呼ばないようにしてたのに、思わず名前よ呼んでしまい、言い直す。
それに吹き出しながら咲也は、
「でも、俺にモデルなんて」
「出来るよ、絶対出来る」
そう言い切られ、
しばらく咲也は考える。
真剣な咲也の顔に、貴俊は彼の手を握りまっすぐ彼を見つめ、
「何に悩んでる?」
すると咲也は神妙な顔をして、
「俺みたいな、素性の人間がそんな大きな存在になれるのかって」
モデルになり表舞台に出られるような人間なわけ無いと、ずっと自分を卑下して生きてきた。
しょせん自分はその程度の人間だと。
家族に愛される事も知らないで、
人への愛を知らない人間が、
何者にもなれないって。
「あんな親から生まれた子供はろくな人生を送らない。・・・そう言われて生きてきた。急に自分に自信を持つことが出来ない」
落ち込む咲也の顔を、貴俊はぎゅっと抱きしめる。
「ち、ちょっと先生、ここ学校・・・」
咲也は慌てて離れようとするが、
俊はさらにぎゅっと咲也を抱きしめ、
「咲也」
優しく彼の名を呼ぶ。愛おしく。大切に。
「俺はお前を誇らしく思ってるよ」
素直にそう伝えた。
咲也の動きが止まる。
彼の頭を撫でながら、
「お前は今まで大人に振り回されてきた。でも、高校を卒業したら、自分で自分の人生を決めていいんだよ。自分で選択するんだ」
言い聞かせるように、
「過去があるから、今の咲也がある。でもこれからの自分は自分で選んでいける。何者にもなれるんだよ」
その言葉に、
咲也は気がついたら涙が流れていた。
「俺はお前を離すつもりはないから、一生」
その言葉に咲也は貴俊を抱きしめ返す。
1番欲しかった言葉。
「だから、安心して挑戦していいよ」
その優しさに、咲也は背中を押された。
その後、
高校在籍中に咲也はモデルのバイトを初めて、SNSで人気が出てき始めた。
卒業してから本格的にモデルの仕事を開始し、
貴俊と咲也は同棲を始めた。
数年後。
「ただいまー」
咲也は2週間ぶりに家に帰ってきた。
「おかえり咲也」
夕食を作りながら出迎える貴俊。
「今回の撮影はフランスだったっけ?どうだった?」
咲也は台所にいる貴俊の後ろから抱きつき、
彼の匂いを嗅ぐ。
「はあ・・・久しぶりの貴俊の匂い・・・」
「ちょ、咲也。手洗って来いって」
「うん」
うんと、言う割には離れずに貴俊のシャツの中に手を入れていく。
「ちょっと・・・あっ」
久しぶりに触れられて、
全身どころ触られても感じてしまう。
貴俊の乳首から腰にかけて肌を撫で回し、後ろに指を入れられう。
「あっ」
後ろが柔らかい。
「もしかして俺がいない間イジってた?」
「・・・毎日欲しくて」
「ベッド行くぞ」
咲也は貴俊を抱き上げて、ベッドに連れてった。
今までの人生は、
自分ではどうすることもできない。
でも、これからの人生は自分で選択できる。
いつだって、愛しい人がいれば。
終わり。
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