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遼二とルナ6

 その夜、遼二はルナに本当のことを打ち明けることを決めた。  このルナにこれまでの経緯を話して聞かせ、紫月のこともルナのことも同じように愛している今の気持ちを包み隠さず伝えたい、そう思っていた。  いつものように同じ寝所に上がり、いざ打ち明けんとしたちょうどその時だった。 「なあ、センセ……あのさ、訊いてもい?」  珍しくも思い詰めたような顔つきで、微苦笑を浮かべながらルナの方から話し掛けてきたのだ。  薄暗い常夜灯の下、今にも泣き出しそうな顔を不適な笑みでごまかすようにルナがじっと見つめてくる。 「――どうした。何でも言ってくれ?」  遼二はクイと前屈みになってルナを覗き込むようにそう言った。 「ん、あのさ……。センセ……遼はその……好きな女、つか恋人とかいる?」 「こ……いびと?」  遼二は驚いた。 「――何故そんなことを訊く……」 「ん、別に……意味はねえけど。ただ……どうなのかなって思っただけ」  ルナはまたわざと取り繕ったような笑顔を見せながらも先を続けた。 「遊郭のさ、兄様たちが言ってたんだよね。俺たち男娼は……本気で誰かを好きになっちゃいけねえんだって。例えばだけどさ、通ってくれる常連さんとか、男娼仲間とかでもそうだし、それから……教育係のセンセとかさ。誰かを好きになったら苦しいだけなんだって。客に抱かれんのも辛くなるし、自分も惨めになるっつって……だから俺にも、例え男娼になっても恋だけはしちゃならねえよって兄様が教えてくれたんだ。すっげ寂しそうなツラしてさ……」 「ルナ……お前……」 「だから訊いてみたかったの。センセにはそういう相手……つか、大事に想ってる人がいんのかなって」  うつむいて今にも泣き出しそうな表情ながら、ヘラヘラと笑う仕草が痛々しくて堪らない。遼二はそっとルナの肩に手を伸ばすと、そのまま自分の胸の中へと引き寄せた。 「いる――。俺にはこの世で唯一人、心の底から惚れたヤツがいる」  腕の中のルナがビクりと震えたような気がしたが、更に強く抱き包みながら続けた。 「紫月というんだ。俺とは四つ違いでな、幼馴染だった。ガキの頃から弟のように思ってた」 「お……とうと? ってことは……相手、男なん……だ?」 「ああ、男同士だ。でも愛し合ってた。誰よりも何よりも――てめえの命よりも大事だと思える唯一の相手だ」 「……ふぅん……そう……なんだ? じゃあ、そいつのこと抱いた?」 「ああ」 「そっか……。だからか。センセが……遼が俺にいつまで経っても床技の実践しねえ理由」 「ルナ――?」 「だって兄様たちの話じゃ、教育係が付くとすぐに床技を教わるってことだったからさ。なのにセンセも皇帝様も……何考えてんだか知らねっけど、いつまで経っても俺にそういうこと教えねえ。茶道だの政治だのって知識も必要なのは分かるけどさ、男娼っつったら先ずは床技だべ? こんなんじゃ俺、マジで男娼になれるか分かんねえじゃん」  あまりにも寂しげな言葉に、遼二は堪らずにルナの髪へと口付けてしまった。

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