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共に歩む未来へ1

 その夜、皇帝邸内の寝所で遼二はルナ――紫月――と向かい合い、どちらからともなく手を重ね合っていた。 「ルナ――これでもうお前が男娼にさせられる心配はなくなった。頭取には皇帝周焔から直々に事情を説明してくれるそうだ。ここの遊郭街でも本格的な調べが始まる」  組の本拠地をここ香港に移す為の建築も始まるが、建ち上がるまでは当分この皇帝邸でこれまで通り暮らすことになると遼二は言った。 「あのさ、センセ。俺が行方不明になった紫月だっていうのは理解できた。けど、いいのか? 俺、記憶も戻ってねえし、もしかしたらこのまんまずっと戻らないままってことも有り得るじゃん」  もう男娼になる為の教育も必要ないというのに、そんな自分が皆んなの側にいてもいいのかと言う。 「正直……俺は『紫月』とか呼ばれても実感湧かねえし、ここに置いてもらってもセンセやセンセの親父さんたちに迷惑かけちまうんじゃねえかなって」  うつむくルナ――紫月――の手を引き寄せて、腕の中へと抱き締めた。 「そんな心配なぞする必要はねえ。遠慮もいらねえ。確かにお前は紫月だが、ルナでもあるんだ。俺はどちらも大切だしどちらも愛しくて仕方ねえ。例え記憶が戻らなかろうと、また一から一緒に俺たちの記憶を作っていけばいいんだ」 「センセ……ホントにそれでいいの?」 「当たり前だ。お前にいなくなられたら、今度こそ俺は気が違いそうだ」 「何言って……」 「本心だ。俺はお前なしじゃ抜け殻も同然なんだ。昔のことなんざ覚えていなくてもいい。今のお前のままでいい。紫月の記憶もルナの記憶も全部お前だ。俺は何度巡り逢ってもお前に惹かれる。何度でも愛するのはお前だけだ。だから――側にいて欲しい。生涯離れねえと云って欲しい」 「先生……」 「愛している――」

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