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第4話 君と、三度目のキス(3)
「お前、もうわかってんだろ」
「……駄目。智也の口から直接聞きたい」
こういったときの陽翔は意外と頑固なのだ。わかってはいたことだけれど、今の状況でわざわざ言わせるなんて意地悪に思える。
智也は観念したように小さく息をつくと、改めて陽翔を見た。それから意を決して言葉を紡ぐ。
「俺は……ハルのことが――」
そのとき、パアンと大きな音がして大輪の花が夜空を彩った。
――好き。その肝心の二文字が見事にかき消され、智也は呆然としてしまう。
しかし、相手にはきちんと伝わったらしい。花火によって照らされた顔は真っ赤に染まっていて、次第に泣き笑いのような表情になった。
陽翔は黙って智也の肩に顔を埋め、少しの間のあとに口を開く。
「どうしよう。嬉しすぎて、言葉が出てこないや」
絞り出すような声。智也は気恥ずかしくて悪態をつくほかない。
「おい、こんなとこでいつまでもくっついてんなよ」
「じゃあ、場所移せばいい?」
そういったことを言いたかったわけではないのだが、陽翔に手を引かれ、あれよあれよという間に場所を移されてしまう。
表からは見えないような木の陰に入ると、再び陽翔は距離を詰めてきた。
「ここなら誰にも見られないから。……ね、キスしようよ」
「なっ!?」
「前はお互いに不意打ちだったでしょ。俺、ちゃんと智也とキスしたい」
まっすぐな瞳に射抜かれて息を呑む。
あのときは勢いのままに唇を重ねてしまったけれど、今度は違う。気持ちが通じ合ってから初めてのキス――意識すればするほど、どうしようもなくドキドキとして頭が煮えそうだ。
「智也」
智也が黙ったままでいると、頬に手が添えられ、ゆっくりと二人の距離が縮まっていった。もう言葉なんてものはいらない。
「ん……」
智也はそっと目を閉じる。すると、程なくして柔らかい感触が降ってきた。
そのうちにも次々と花火が打ち上げられ、重なった二人の影を照らしだす。まるで世界に二人だけしかいないような錯覚に陥りながら、何度も互いの唇を重ねた。
「好きだよ、智也」
息継ぎの間の甘い囁きに、胸がきゅうっと締めつけられたのも束の間。陽翔の熱い舌が歯列を割って、まさぐるように上顎をくすぐってくる。
「っ、ハル……」
こちらも負けじと舌先を伸ばすけれど、すぐに絡めとられてしまい、すがるように陽翔の背に腕を回した。
時折漏れる吐息は熱く、互いの興奮を如実に物語っている。そして何よりも、男の生理現象というものはわかりやすい。
やがて名残惜しげに口づけを解くと、陽翔は熱っぽく囁いた。
「……ごめん。ちょっとこのままでいさせて」
と、抱きすくめられたかと思えば、陽翔のものが太股に押しつけられる。その硬さと熱さに智也はドキッとした。
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