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第4話 君と、三度目のキス(4)

「お前なあ~」 「何もしないから」  そう言って、陽翔はさらに力強く抱きしめてくる。そのせいでますます下半身が密着し、熱っぽいため息が耳元にかかった。  正直、智也だって同じ状況だ。体が触れ合うだけで変に意識してしまい、鼓動がうるさいくらいに高鳴ってしまう。 「あのよ、俺も困ってんだけど……」 「抑えが効かなくなっちゃいそうだから駄目。智也と付き合うことになったら、今まで以上のこともしたいって……ずっと思ってたし」 「『今まで以上』って」 「触り合いっこより、エッチなこと」 「――っ」  直接的な物言いに智也の顔が赤く染まる。どぎまぎとしていたらクスッと笑われた。 「……大丈夫、ちゃんと我慢するよ。智也が俺のこと受け入れてくれただけで嬉しいし、無理強いは絶対にしたくないから」  陽翔は軽く身を離して、微笑みを浮かべる。  気持ちは嬉しいけれど、そんなふうに言われてしまうと、まるで自分が陽翔のことを求めていないみたいで少しだけ悔しくなった。智也は半ば衝動的に、相手のシャツの襟を掴んで引き寄せる。 「俺は……ハルとなら、別にいいし。お前がやりたいって思ってること、全部一緒にやりてーよ」  そう言ってのけると、あからさまに陽翔は目を泳がせた。 「今、そんなこと言われても困るんですけどっ」 「なんで」 「こういうのは順序を追ってというか」 「は? 今さら順序もねーだろ」 「これでも結構、限界なんだから――何するかわかんないよ」 「いいよ、それでも。いっそのこと二人で抜け出そうぜ、花火だってもう終わりなんだからさ」  打ち上げ花火は、今まさにフィナーレを迎えようとしていた。  ラストを飾るスターマイン。それを尻目に、二人は肩を寄せ合う。 「本当、智也には敵わないや」  先に口を開いたのは陽翔の方だった。それから、ふっと表情を和らげて続ける。  ――ここじゃなんだから、ウチ来てくれる?  その言葉に智也は頷き、指を絡めるようにして手を握ったのだった。

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