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第5話 恋人として初めての…(1)

 智也は一度自宅に寄ってから、陽翔の家へと向かった。  花火が終わったあと、泊まってもいいかという申し出を両親に伝え、着替えなどの荷物を取りに帰ってきたのだ。 「……クソ、落ち着かねー」  家に上がって、入浴を済ませたのがつい先ほど。そして現在、入れ替わりで陽翔が風呂に入っているところである。  智也はベッドに腰かけ、きょろきょろと視線をさまよわせた。  ついこの間までは何の気もなしに訪れていた部屋だが、ここ最近は妙に緊張してしまう。ましてや今日は母親が夜勤でいないらしく、これから陽翔と体を重ねるかもしれないのだ。 (って、そういや男同士ってどうヤるんだ?)  男女ならともかく、男同士のセックスなど未知の世界である。智也は思いつきでスマートフォンを手に取った。  検索ワードに戸惑いながらも、とりあえずは必要な知識を得るべく、インターネットの海へと飛び込む。試しに動画を開いてみてハッとした。 (しまった――そもそも、俺とハルどっちが挿れる側だ!?)  男同士、という生々しい映像にショックを受ける。  陽翔はどちらを望んでいるだろう。そもそも、自分はどちらをしたいと思うのか。――そんなもの、今の今まで考えたこともなかったし、考えたところでわからない。  悶々としているうちに、ガチャリとドアが開く音がして、慌ててそちらに顔を向ける。風呂から出たらしく、Tシャツにスウェットパンツというラフな格好の陽翔が現れた。 「あっつ~、ちょっとクーラー強くしていい?」 「お、おう」  クーラーのリモコンを操作しつつ、陽翔が隣に座ってくる。智也はそれだけで身を固くしてしまった。 「なに、どうかした?」 「いや……お前って挿れたいの、挿れられたいの? どっち?」 「ええっ! 今さら!?」 「だって、お前一言も言ってなかっただろ!?」  言うと、陽翔の口から「あっ」という声が上がった。 「ご、ごごごめん! てっきり伝わってるものかと思って!」 「そんで、どっちなわけ?」 「その、俺は智也に挿れたい……です」 「………………」  どうやら陽翔のなかでは、すでに決まっていたことらしい――その衝撃的な事実に黙っていたら、彼は慌てた様子で言葉を加えてきた。 「体格的にも俺の方がおっきいし! 普通に考えたらそうじゃない?」 「……体格で言ったら、チンコのサイズ的に俺のが入りやすくね?」 「そ、そんな事言われても……俺、ずっとそういった妄想してたし。というか、智也は俺に挿れたいとか思うの?」 「それは――」  智也はしばし考え込んだ。  が、やはりピンとこなくて参ってしまう。正直、自分のなかにそのような欲望があるとは思えないが……、 「わかった、公平にじゃんけんで決めよう。勝った人が挿れる側ね」  陽翔が提案してくる。このままでは話も進まなさそうだし、妙案かもしれないと思った。 「よし、ノッた」  そして互いに右手を前に出し、じゃんけんぽんと出した結果――智也はグーを出し、陽翔はパーを出した。つまり、智也が挿入される側に決まったのである。 「やった、勝ったあ!」  陽翔がガッツポーズをして喜びを露わにする。その一方で智也は愕然としていた。

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