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第6話 セックスリベンジ(4)★
「智也、可愛すぎ……」
耳元で囁かれてゾクッと肌が粟立つ。
いつもの優しい声音とは違う、艶を帯びた低い声。智也が振り向けば、陽翔は以前にも増して余裕のなさそうな顔をしていた。
「ハル?」
「ごめん、今ちょっとやばい。智也のナカに挿れたくてしょうがない――」
「っあ!?」
視界が反転してベッドに押し倒される。
陽翔は明らかに切羽詰まっている様子だった。こちらへと覆い被さってくるなり、己のものを取り出して、情欲に満ちた視線を向けてくる。
「痛くさせちゃうだろうけど、無理そうだったら言って」
脚の間に割り入ってコンドームを装着しながらも、気遣いの声をかけてくれるのは相変わらずだ。
自分だっていっぱいいっぱいのくせに――そう思ったら、胸の内がきゅんとして堪らなくなった。智也は勢い任せに陽翔の胸倉を掴んで引き寄せる。
「この前も言ったろ? 『お前がやりたいって思ってること、全部一緒にやりたい』って。ちゃんとお前の全部受け止めるから……好きにしろよ」
軽くキスをして、素直な気持ちを言ってのける。
陽翔は目を瞬かせたあとに、そっとこちらの首筋に顔を埋めてきた。
「挿れるよ、智也……」
後孔に先端を擦りつけられ、腰の角度が定まるや否や陽翔のものが押し入ってくる。
散々ほぐした甲斐あって痛みはさほどないものの、内臓を押し上げられているかのような圧迫感が凄まじい。みちみちと肉壁を押し広げられる感覚に智也は息を詰め、縋るように陽翔の体に抱きついた。
「くっ、は……」
「智也……ゆっくり息、吐いて」
陽翔が抱きしめ返してきて、あやすように体をさすってくれる。
言われたとおりに深呼吸を繰り返していると、強張った体から次第に力が抜けるのを感じた。
それに合わせて陽翔が腰を進めていき、少しずつ結合が深くなっていく。すべて収まった頃には二人して汗だくになっていた。
「ハルの……全部入ったんだよな?」
「うん、入ったよ……」
陽翔の返事は震えており、不思議に思って顔を覗き込んでみる。すると、彼は瞳にうっすらと涙を浮かべていた。
「おまっ、なに泣いてんだよ!?」
「ご、ごめんね、格好つかなくてっ。智也と恋人になったんだなあって実感して――なんだか夢みたいで」
陽翔が慌てて目元を拭いながら答える。
智也は無性に愛おしさが込み上げてくるのを感じ、わしゃわしゃと両手でその頭を撫でてやった。
「夢なんかじゃねーよ、バカハル。この泣き虫野郎」
笑いかければ、陽翔もまた表情を和らげる。まるで、幼少期のやり取りを再現しているかのようだった。
「ん、そうだよね。俺たち、ちゃんと恋人としてセックスしてる……幸せすぎて死んじゃいそう」
「いや死ぬのは困っけど。……でも、俺も同じ気持ちだよ。腹ん中がハルのでいっぱいになってんの、なんかすげー幸せな感じする」
「そ、そういうこと言うのズルくない? あんま煽んないでよ、これ智也の方はしんどいでしょ?」
「平気だっつーの。男なんだし、そんなヤワな体してねーよ」
本当は異物感と圧迫感で苦しかったけれど、それでも構わないと思った。こちらだって相手を求めているのは同じなのだ。だから、多少の苦痛なんてどうってことない。
智也が虚勢を張ってみせると、陽翔は優しく頬に触れてきた。
「……ゆっくり動くね」
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