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第7話 欲求不満な二人(3)★
「ちょ、ちょっと智也。くっついてるだけじゃ済まなくなっちゃうでしょ」
「そんでもいいじゃん」
「誰か来たらどうすんの」
「部活始まったばっかだし、どうせ誰も来ねーよ。……なあ、ハル――シようぜ?」
耳元で囁けば、陽翔の体がピクッと震える。
それを見過ごすはずもなく、智也は股間をやんわりと撫で上げてやった。そこは既に硬く張りつめており、ズボン越しにも熱を帯びているのがよくわかる。
「っ、智也」
「……我慢してたのがお前だけだと思うなよ。俺だって男なんだぞ」
言って、噛みつかんばかりの勢いで唇を重ねた。舌を差し入れれば、すぐさま絡め取られて吸い上げられる。
「ん、っ……」
舌先が触れ合うだけで背筋にゾクゾクとしたものを感じ、思考が蕩けていくようだ。
陽翔とのキスは何度しても飽きない。もっと、とねだるように背中に腕を回せば、さらに深く貪られる。
陽翔は情欲に濡れた瞳でこちらを見下ろしており、その表情はひどく煽情的だった。
「その気になったかよ」
ひとしきり貪りあってから口を離せば、銀色の糸が二人の間に伝った。それを舌先でぷつりと切ってから、挑発的に笑ってみせる。
「そりゃあ、なるに決まってるでしょ」
いつもより低い声で答える陽翔に、ますます興奮が高まってしまう。
智也は満足げに目を細めると、おもむろに長財布をズボンのポケットから取り出した。
「じゃあ、これ使う?」
長財布の中から出てきたものを、見せつけるかのように顔の前へと持っていき、
「――ゴ・ム」
ニヤリと口角を上げて言ってのける。その言葉どおり、智也の手にはコンドームが握られていた。
途端、陽翔の目が大きく見開かれ、ごくりと生唾を飲み込む音がする。
「ああもうっ」
いよいよ余裕がなくなったらしく、陽翔が乱暴にコンドームを奪い取る。
そして智也の体を反転させるなり、そのまま個室の壁に押し付けてきた。性急にベルトを外され、下着ごとズボンを下ろされてしまう。
「学園の王子様が随分と強引だな?」
「悪い? 煽った責任は取ってもらうからね」
「……当然。わかってて煽ったに決まってんだろ?」
そう答えて背後の陽翔に身を委ねる。
するとビニールのパッケージを破く音が聞こえ、コンドームを装着した指が後孔に宛がわれた。智也が用意していたのは潤滑ゼリーが塗布されているコンドームで、それは何の抵抗もなくすぐに潜り込んでくる。
「っ、ん……」
「このコンドーム、すっごいヌルヌルする……こんなのいつも持ってたの?」
「いざというとき便利だろ? スケベな誰かさんもいることだし」
「減らず口たたく余裕、まだあるんだ?」
陽翔が拗ねたように呟き、体内をまさぐる指を増やそうとする。
再び押し入ってきた指をバラバラに動かされて、智也の口から熱い吐息がこぼれた。
「あ、は……」
指先が前立腺をかすめるたび、甘い痺れが全身を駆け巡る。
が、逆手だとうまく触ってもらえず、どうにもじれったい――智也は無意識のうちに腰を振り、陽翔の指に自らのいいところを擦りつけてしまう。
「……智也のエッチ。いつの間にそんなこと覚えたの?」
「うるせっ……ん、うっ」
窄まりはすっかり柔らかくなり、今では三本の指を呑み込んでいた。
ヌチュッとくぐもった水音を立てながら抜き挿しされるたび、智也の理性はどんどん削られていく。もっと確かな快感を得たくて、焦れたように陽翔の顔へ視線を向けた。
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