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第7話 欲求不満な二人(5)★
「これ、持ち帰らないとアレでしょ」
まじまじと見ていたせいか、陽翔がそんなふうに説明してきたけれど、わざわざ人のものまで処理しなくてもいいと思う。しかも、そのまま自分が持ち帰ろうとするのはいかがなものか。……などと考えては顔をしかめていた智也だったが、不意に“それ”はやって来た。
「……ハル、今すぐチンコ抜け」
「へ?」
「小便したくなってきちまった」
押し寄せてきたのは、急激な尿意だった。勃起していたときは気にならなかったものの、今では下腹部がムズムズとしてかなわない。
「え、おしっこ? このタイミングで!?」
「いーから早く! マジ漏れそうなんだよ!」
我ながら色気のなさに呆れてしまうけれど、危機感を覚えるほど切羽詰まっていた。
陽翔はやれやれとばかりに苦笑し、名残惜しそうにしつつも身を離す。間もなくして、ずるりと陰茎が引き抜かれた。
「っ、あ!?」
智也の体勢が崩れる。咄嗟に陽翔が抱きかかえてくれたが、すっかり足腰が立たなくなっていた。
さらには最悪なことに、今の衝撃で下腹部に力が入ってしまったらしい。ぱんぱんになった膀胱が一瞬緩んだような感覚がして、智也は慌てて股間を押さえた。
かなりまずい状況なのに体が動いてくれず、頭の中がパニック状態になる。すると、そのときだった。
「もう、このまま出しちゃいなよ」
耳元に落とされた、陽翔の言葉にぎょっとした。
まさかと思って身構えたけれどもう遅い。背後から抱きしめるようにして、便器の前に立たされた。
「待てよっ、できるわけねーだろ!?」
「普通にいつも隣でしてるでしょ」
陽翔が智也のものに手を添えて角度を調節する。間違いない、これは本気だ。
「そ、それとこれとは違ェっての! さすがにハズいわ!」
「大丈夫だから――ねえ、して?」
もう片方の手が智也の下腹を撫でるや否や、グッと力を込めて圧迫してくる。優しげな口調とは裏腹に、排尿を促そうというその手つきには遠慮がなく、膀胱が悲鳴を上げた。
「あっ、く……や、やめ」
「ほら、我慢しないで。大丈夫だから」
陽翔の手が一定のリズムで下腹部を押してくる。
もう我慢できない――そう思った次の瞬間には、黄色い液体がほとばしっていた。
「ふあぁ……ぁ……」
じょぼじょぼ、とみっともない音が響いて、羞恥心と屈辱感でいっぱいになる。
堰を切ったように溢れ出たそれは、勢いよく放物線を描くばかりでなかなか止まってくれなかった。
「い、や……だ――見んな、ハルぅ……っ」
あまりにもな光景に目をつぶるも、陽翔の視線を感じて堪らなくなってしまう。
結局どうにもならなくて、ぶるっと体を震わせてすべて出し切った。長い放尿が終われば、あとは独特の臭いが立ち込める。
智也は頬を赤らめて俯いたまま動けずにいたが、やがて陽翔が思いもよらぬことを言ってきた。
「ごめん、ちょっと興奮しちゃった」
「っ!?」
「恥ずかしいとこ、見せてくれて嬉しいなあ……なんて」
「………………」
智也は思いきり眉根を寄せてしまった。
はっきり言って不可解でしかない。というか、排泄シーンを見て喜ぶだなんて変態としか思えないし、さすがに引くものがある。
「……やっぱお前、ちっとは自重した方がいいわ」
「ええっ!」
そうこうして振り出しに戻った気がする。何にせよ本気で嫌がっているわけではないが、このあたりの折り合いをつけるのは難しそうだ。
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