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そこらに吐いて車の中を汚すわけに行かない。ドアを開けて外に出ようとしたら成吾に腕を引っ張られて止められた。
「そんなにふらふらじゃ、転んで怪我するぞ。ここで我慢してろ」
ふうふうと息を吐いて耐える。ふとズボンの内側が汚れているのに気づく。血だ。奥の方。詳しくはパンツを下ろさないと分からない……。
「成吾さん……僕、もうどっか怪我してるみたい……」
「怪我じゃないよ。それも薬の副作用。ユートはΩの中でも俺が処置したけど血はもう止まっていて心配ない。いまは俺の方を向け」
顔を上げれないまま聞いた。
「…………薬って結局、どういうものですか?」
「気にしなくていいよ、説明したってユートには難しくてわからないから」
それでも、どうなっているのか確認するのが自分の責任みたいな気がする。こわごわとズボンに手をかけたときグズグズするなと成吾に髪を掴まれてひっぱり倒された。
「俺の命令に従え!! 俺がユートから離れた時だって、動かずに待っていろって言っただろう!! そうしていれば何も起きずにすんでいたんだ! いま俺が、ユートは知らなくていいと言うんだから、そうするのがユートにとっていいことなんだよ!!」
「でも僕……。毎晩その日一日あったことを必ず神様に報告するんです。神様に懺悔を聞いてもらうにはちゃんと知っておかないと……」
「口答えかよ。たかがペットが偉そうに……。捨てられたくないなら、二度と俺に逆らうな!!」
悪い子だと成吾は吠えあげ、震えるユートの肩を勢いよく噛み付いた。
「……跪け」
「……はい……」
成吾の鋭い牙に噛まれた肩は、出血はないものの酷く痛む。でもこんなところで捨てられたくないユートは、全身が痛む体をかがませて成吾の足の間に入った。成吾の顔を涙の溜まった瞳で見上げる。
「いい子だ。これからは、これを付けてもらうよ」
差し出されたのは黒い首輪。なめらかな革のベルトに金属の輪がついている。
「ユートが寝ている間に用意したんだ。鎖で繋いでおけば、もう二度と迷子にならないだろ」
黙って見ているうちに成吾の手が回って首にはめられた。ぴったりとしていて息苦しい。でも、これで今すぐに捨てられる心配はない。成吾の表情が少し晴れたので、ユートもぎこちなく笑い返した。
「間に合わせだけど、なかなか似合ってるじゃないか」
「そうですか? ありがとうございます……」
成吾の手がユートの頭を撫でたあと、ゆっくり下りてきて、頬に触れた。
「帰る前に仲直りのキスをしよう」
「はい……」
そっと目を閉じたユートの肌に成吾の吐息が触れ、二人の唇が合わさる。入り込んできた舌に、ユートは精一杯奉仕した。成吾に教えてもらった成吾が好む舌使いで、顔の角度を変えながら舐めあげる。成吾が太い舌でユートの喉の奥を犯すのも、首を絞めてくるのにも必死で耐えて、成吾がやっと開放してくれたときには、ユートは窒息寸前で意識が朦朧としていた。
「ああいいよユート、いまのすごく上手だったね……。さぁ、いつまでもこんなところにいないで、そろそろ帰ろう」
帰ったら、きっとユートはもう外には出られない。成吾を裏切った報いとして、部屋の中で一生鎖に繋がれたままになるだろう。
それでもユートは急いで助手席のシートに戻って、シートベルトを締めた。早く帰りたい、帰ったら今日買ってもらったものを自分用のクローゼットに閉まって、成吾さんのベッドで一緒に眠るんだ──。
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