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 制服の上にミドル丈のモッズコートを羽織った長身の彼は、自分を取り囲む面々に向かって言い放つ。 「つまり、同じ学年になって居ても立ってもいられなくなって、集団告白しにきたのか?」  精悍な上がり眉、十代の高校生にしては底知れなさを秘めた眼光鋭い双眸に、長めの前髪がはらりとかかった。 「一人ずつ断るのも面倒だな。時短のため纏めてフッてもいいか」  誰よりも自信に漲る、見るからにアルファ性だとわかる彼は不敵な笑みを浮かべた。印象に残る鋭い眼差しと片笑みに、距離をおいて傍観していたオメガ性の鳴海は心臓を粟立たせる。 (……あの人だけじゃない、みんなアルファだ) 「コッチには運動部のエースもいますし、人数でも力でも敵わないの、わかってます?」 「フラれるのが嫌で強硬手段にでも出るつもりか? 明日から園舎に登園して、情操教育を一からやり直したらどうだ」 「……やっぱり、どーもわかってないみたいですね、ソッチが不利な状況にあるってこと」 「噂では喧嘩慣れしてるとか聞きますけど、実際、そんな場面見たこともないですし」  見た目に気を遣っているのがよくわかる、そこそこにルックスのいいアルファの群れは彼を口々に罵った。  それでも不敵な笑みは微塵も崩れない。  目尻が冷ややかに吊り上がった双眸は、髪型から着こなしまで似通った年下の同級生達を真っ直ぐに見据えていた。 「あ」  点在するベンチで談笑していた生徒は皆消え失せ、どうしようかと迷っていた鳴海は、思わず声を上げる。  先頭で喋っていた群れのリーダー格がズボンのポケットから小型ナイフを取り出し、目を疑った。 「コッチには武器もあるんですよ?」  先生を呼びにいかなければ。鳴海は植え込みの陰で一人慌てふためく。  しかし凶器を突きつけられた当人はと言うと、その場で回れ右をし、引き出された刃に平然と背中を向けた。 「これ以上、ごっこ遊びには付き合えない」

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