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2-1-お近づき
凛聖に入学してからの一週目はオリエンテーションや、アルファ性・オメガ性の生徒に実施される抑制剤の集団接種などで立て込んでいた。
アルファはラット、オメガはヒートと呼ばれる発情期を抑え込むための接種。個体差もあるが、一般的に青年期から成人期にかけて起こる可能性があり、一生経験しない者もいれば、改良を重ねた抑制剤を接種していても予防効果は百パーセントとは言いきれず、発情期になる者も一定数いるのが現状だった。
「第二体育館ってどこにあるの?」
四月中旬、新学期の二週目に入って本格的な高校生活が幕を開けた。どこのクラスも内部生が過半数を占め、すでに仲のいいグループが出来上がっている。必然的に外部生同士のグループが形成されていた。
昼休みになると賑やかな教室を出、鳴海は中庭へ向かった。
カフェテリアや購買は混雑するので、昼食は登校時にコンビニで買うようにしている。小学校高学年の頃から単独行動に偏っていて、ランチを共にする親しい友人は今のところいなかった。
晴天の日向はポカポカしていて過ごしやすく、複数のベンチでは中学部・高等部の生徒が思い思いに昼休みを過ごしていた。
生い茂る木々や生け垣の緑が瑞々しい。青空に枝葉を伸ばす常緑樹の下、日陰のベンチで鳴海はサンドイッチを食べる。中身はシンプルに卵サラダのみだ。飲み物はボトル缶のカフェオレ。ここ最近、お決まりの組み合わせだった。
(日陰だと肌寒いけど、気持ちがいい……――)
「隣、空いてるか?」
鳴海はびっくりした。
「高等部一年Cクラス、外部生、久世鳴海」
振り返れば、昨日、屋上庭園で会った御堂舜がいつの間にかベンチの真後ろに立っていた。
「空いて、ます、けど」
動揺して片言になった返事を聞くなり、舜は鳴海の隣に腰を下ろした。
「エビとアボカド」
「え?」
「サーモンとクリームチーズ。チキンとバジルトマト。どのベーグルがいい?」
「いえ、そんな、俺は……」
「昨日のお礼だ」
個装のベーグルサンドを膝の上に置かれた。鳴海がポカンとしている間に、舜は一つ目のベーグルサンドを平らげた。
膨らんだ紙袋から二つ目を取り出し、豪快にかぶりつく彼の隣で、鳴海は食べかけのサンドイッチを一先ず口の中に詰め込んだ。
「……ありがとうございます、いただきます」
お礼を述べてベーグルサンドに齧りつく。ブルーベリージャムの甘酸っぱい味が口の中に広がった。
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