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 大袈裟だ。そう言い返そうとして、余りにも真っ直ぐな眼差しに中てられて頬が上気した。体の奥まで射貫きかねない鋭さで、鳴海はバスローブの隙だらけな合わせ目を慎重に重ね合わせる。 「着たままでも……いい……?」  二十一歳の舜は一瞬だけ目を剥いた。窓辺の間接照明に照らされて淡い光を帯びた、満遍なく潤んだ切れ長な双眸に折れて「それもそれで悪くないか」と、苦笑まじりに呟く。  自ら目を閉じたオメガにキスをした。  えらく力のこもった瞼。捩れた眉。シャワーを浴びた直後で瑞々しい肌。毛先が濡れて、しんなりした黒髪。鳴海の一つ一つを薄目がちに視界に焼きつけながら……。 「ン……ッ」  口内に滑り込んできた舌先に鳴海は呻吟する。  乱れるキスが未経験というわけではない。ただ、こんなシチュエーショも、舜の裸身をまともに目の当たりにするのも初めてで、最初はどうしても緊張した。 「ん、ン……ン……」  唇の内側で柔らかな摩擦が生じる。舌尖を吸われ、下唇を食まれる。不規則に立つ水音が鼓膜に滴っては、頭の芯をグラつかせる。  緊張の糸を緩めようとする丁寧で献身的なキスに、強張っていたオメガの肢体は次第に解れていった。 「……舜……」  真っ白な枕に頭を預けた鳴海は、上体を起こした彼を面映ゆそうに見上げる。 「舜は……帰宅部だったにしては……何だか、その……すごい体してる……」  今は羽毛布団を共に被っているが、シャワーをざっと終わらせて浴室から戻ってきた舜に、鳴海は動揺を禁じえなかった。  無駄な贅肉のないスリムな筋肉質。さり気なく割れた腹筋。引き締まって括れのある腰回り。確かに万年帰宅部だったとは到底思えない、見栄えのよさだった。 『愛する人を守り通す力を舜にも身につけてほしい』  警備業務に就くアルファの父親に、武道空手をベースにした護身術などを教わり、定期的に自主トレーニングを行っている舜は「鳴海は身長が伸びたな」と、感慨深げに言う。 「今は百七十三センチだったか」 「うん。この三年間で四センチ伸びたくらいで、そんなに変わってない」 「いいや、変わった」  舜は鳴海の首筋に顔を埋めた。  かつて心細い夜に縋った月を連想させるプラチナブロンドではない、漆黒の髪に薄い皮膚を擽られ、鳴海は首を竦める。 「前よりも、もっと、そそられる」  入念に閉じられていたバスローブの合わせ目を緩め、舜は滑らかな肌にキスを落としていった。  首筋から鎖骨、そして胸元へ。うっすら色づく突起に差しかかると、上下の唇で挟み込んで、緩々と啜った。 「あ」  鳴海はうっかり声を上げた。これまで何ら意識してこなかった場所を熱烈に構われて、免疫のない性感を見出し、戸惑った。 (恥ずかしい)  初めてなのに気持ちよく感じる。 (俺って、はしたない……?)

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