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第10話

ほぁ、とベッドの上で座りながらお水を飲むとため息がでてようやく落ち着いてくる。 凄かった。とにかく凄かった。 あのあともう一度一緒に出して、湯船でもう一度。 ちょっぴり逆上せてしまって抱き上げられて、やっと終わったと一息ついたら、洗い場でクレイグの膝に跨がってもう一回。 最後は石鹸の滑りを借りて指がお尻の穴に少しだけ入ってきて、たぶん第一関節くらいまでだろうけど小刻みに動いて、皺のところを何度も何度も擦られて、おちんちんも擦られたらもう、耐えられなかったよ。 そんなわけで疲れきった僕はうとうとしてるんだけど、ここで寝てもいいのかな…? クレイグのお部屋だしなぁ。そう思案していると、お風呂の諸々の片付けを終えたクレイグが戻ってきた。 掃除はメイドさんがしてくれるそうだけど、匂いとか、その他もろもろ気になっちゃって…気づいたクレイグがしてくれたのだ。 水差しを持って近づいてくるクレイグは心なしか晴れやかな顔をしていて、こちらが照れてしまう。 お水のお代わりを貰って、飲み干すとグラスを取られる。 「さて、寝るか。」 体の大きなクレイグが横になっても広さに余裕のあるベッドに寝転んで手招き。 「どうした?寝ないのか?」 ん?と不思議そうに問いかけられて我にかえる。 「僕もここで寝ていいの?」 「逆にどこで寝るつもりなんだ…」 「んと、タカギのところ?」 「やめておけ。夫婦水入らずの時間だぞ。」 あ、そっか。イチャイチャは邪魔しちゃ駄目だよね。 「ここで一緒に寝てもいい?」 そう聞いたときには抱き抱えられて、ベッドに入れられていた。 「スミレの寝る場所はここだ。頼むから他には行くなよ。」 「クレイグ、ひとりになりたいときとかない?」 「片時も離したくないと思うほどだ。スミレがひとりになりたい時は…我慢する。」 ポンポンとリズムよく叩かれて、瞼が重くなる。 今日は、疲れた。嬉しかった。とっても楽しかった。 「ん、ぼくは、もう、ひとりはやだなぁ」 「そうか。スミレもうおやすみ。また明日な?」 「ん。おやすみなさい、おきたら、いる?」 「当たり前だろう。」 返事を聞いて安心して、ふぁぁと大きな欠伸をして目の前の大きな胸板におでこをくっつけて眠りに落ちた。 「おおっ」 ぱちりと目を開ければまだ薄暗い。 目の前には漆黒の狼さん。 凄い迫力だ…吃驚したけれどほわほわな鬣に埋まれば気持ちがいい。 二度寝しよ、と呟いて人のときよりもずっと太い首にしがみついた。 次に目が覚めたときはクレイグに髪をとかれていた。 優しい瞳がやけに恥ずかしく感じて、目を伏せると脇に手を入れられて持ち上げられクレイグの膝の上に降ろされた。 そのままぎゅっと抱き締めて「おはよう」と朝の挨拶をされたら嬉しくて堪らなくなって目が潤む。 「おはよう、ございます。」 ぐりぐりと頭を擦り付けてにやけてしまう顔を隠すが、直ぐに覗き込まれてしまう。 「スミレどうした?」 「おやすみして、おはようって嬉しいね?」 くふふ、と漏らしながら答えるとチュッチュッと顔中にキスの雨が降ってくる。心がほこほこして、僕からもお返しに目元に口づけたところでノックの音が鳴り響く。 「スミレ~~!起きてるかぁ?」 「タカギっ!」 クレイグの膝からぴょこんと飛び降りて扉の前でクレイグを振り返り、頷いてくれたのを見て扉を開けた。 「おはよ。着替えとか持ってきたぞ。」 「タカギ、ライさん、おはようございます!着替えありがとう!」 「おはよう、スミレ君。朝から元気一杯だね?クレイグと良いことあった?」 「クレイグとおやすみなさいして、おはようも言えました。タカギとライさんに朝から会えたのも嬉しいです!」 うんうん、と頷くタカギとライさんに頭を撫でくりまわされて、タカギに手を引かれて衝立の奥で着替える。 黒の細身のズボンに弛めのシャツ。上からローブを羽織って出来上がりだ。 パパっと身だしなみを整えたクレイグは朝食前に少しお仕事をするとの事で扉の前で見送った。 しばらく扉を眺めていたけれど、タカギに椅子に促されて座れば髪を櫛でといてくれる。 「今日は、ポニーテールな?」 「ポニーテールって?」 「高めの位置でいっこに縛った髪型。」 「はぁい。お願いします。」 鏡越しにニコニコしているライさんと目が合った。 「スミレくん、昨夜はお風呂大丈夫だった?」 「体を洗うのに汗かいて、髪を洗うのはもっと大変で、髪切ろうとしたらクレイグに止められました。お風呂難しい…」 「そっかあ。まぁ、慣れちゃえば簡単だから、しばらくは練習だね?クレイグの下半身は大丈夫だった?」 「ライオネル!」 あ、櫛がライさんに飛んでった。 避けもせずに当たってるのに嬉しそうにしているライさん。 「えと、大きくなって大変そうだったから小さくしました!」 「スミレ!」 「でもタカギに一回出せば収まるって教わったのにクレイグ全然収まらなくて、何回もしたよ?僕も一回出せば小さくなるのにね、クレイグに触られるとすぐに大きくなるの。不思議だよね?」 「バカ!」 怒るタカギと爆笑するライさん。 それが面白くて一緒にケラケラ笑ったら二人とも一瞬真顔になってまた頭を撫でくりまわされた。 ゆったりお茶を飲みながらおしゃべりしているとクレイグが帰って来た。 それだけで何だか嬉しくてそろそろと近づいていくと頬を手の甲で撫でて、髪に触れる。 「待たせてすまない。朝食にするか。」 頷いて差し出された手を取って歩き出せばエスコートしてくれて、昨日の食堂についた。 昨夜食べられなかったフルーツを料理長さんに渡す。 朝食に食べると言えば後でフルーツゼリーにしてくれるとの事で、ゼリーを食べたことがないと伝えたら凄く美味しいゼリーを作ります!と意気込んでくれている。 席につけば美味しそうな料理が並んでいる。 昨夜は沢山食べたからあまりお腹が空いてなかったけれど、良い香りにお腹がくぅと音をたてた。 暖かいポタージュスープと弾力のあるもっちりとしたパン。 茹でた野菜とほぐした鶏肉のサラダ。 そう、今朝はお肉に挑戦したのだ。鳥さんを食べるの?と窓から見える小鳥を見ながら食べた鶏肉はとっても美味しかった… 鳥さんにごめんなさい、と謝るとタカギが 「ありがとうだよ。」 って教えてくれたから、ありがとうとお礼を言いながら食べた。 「え!?クレイグ、狼になってたの?」 驚きながらもにやにやしているライさん。 「はい。朝方、まだ薄暗い時に起きたら狼さんがいて、ふわふわな鬣に埋もれて二度寝しました!」 「へぇ、クレイグ、無意識にでしょう?」 ライさんがクレイグに視線を向ければフイと横を向く。 「ふふ。スミレ君、無意識に獣の姿になるのは獣人にとっては恥ずかしい事なんだよ。」 「え!あんなにかっこよくて可愛いのに!何でですか?」 「自分の意思とは関係なく獣化するのはね、思春期頃に良くやるんだよね。発情期前とか子供から大人になりかけって時期にね、コントロールが上手く出来なくなっちゃうの。クレイグ、昨日よっぽど浮かれてたんだね~?」 タカギが「夢精みたいなもんか?」なんて呟いている。 クレイグを見上げればほんの少しだけど耳が赤い。 照れてる、のかな? 「可愛い!」 そう言えば、お前のが可愛いと真顔で返ってきて、どちらともなく手を繋いだ。

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