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クレイグ視点 4

   スミレを連れて皆で食事へと向かう。  スミレの好みはわからず、料理長たちから暫くは食事に立ち会いたいと願い入れがあり、気になるかと思ったが、スミレは何故かパンに夢中であった。  ジッと見つめた後、キョロキョロと周りを見渡し、またジッと見つめる。意を決したように人差し指でパンを押し、その戻る様子を見て、瞳を輝かせている。  それが可愛らしくて、思わず咎めるようにスミレを見ているタカギに声をかければ呆れた視線で返事をされる。 「確かに、俺もここきて白パン食べて感動したわ。」 「あちらは違うのか?」 「うん?何かかためのバリバリパンだったんだよね。いや、あれはあれで癖になるんだけどさ。な?スミレ。」 「…ん。」 「ダメだ。あいつふわふわパンに夢中過ぎる。」  食べても良いと促すと両手で持って半分にわり、小さな口を大きく開けて噛る。 「ふあふあ~。ほわほわ~。」  可愛い笑顔でパンを頬張る姿は小動物のようで、あまり表情の動かない筈であるのに、口角が上がっていくのが自分でわかる。  食事を進めれば、露見するスミレの食生活。  幼い頃からスープとパンしか出されていなかったとは…スミレは年の割に細い。骨格が華奢過ぎるのだ。  好きな食べ物を問われて疑いもせずにパンとスープと答えたのは知らなかったからだと思うと言葉が出ず、ライオネルが明るい声を出すまでスミレを見つめてしまう。  図鑑でみた魚が食べ物だとは思わなかったのか、大きな瞳をパチパチとするスミレ。  案の定少量で満腹になってしまったスミレは、皆に優しく声をかけられしゃがみこんでしまう。  抱き上げ、首筋に顔を埋めると僅かに濡れた感触がして、頭を撫でる。  そして、また、爆弾を落とすのだ。 「おふろ?」 「風呂だ。」  扉から湯気の上る浴場へ顔を出して確かめ、また戻り、これが風呂なのかと表情で訴えてくる。  今まで魔法で身体を綺麗にしていただけであった為、苦戦しており、額には汗が滲んでいるが、その顔は楽しそうで。汗を拭って、纏わりつく髪を後ろへ流す様は美しい。  髪はからんで洗いにくそうで、挙げ句の果てにはハサミで切ると言い出した為慌てて長い髪は人に洗って貰うものだと伝える。  塔の中だけで、中々動けなかっただろうから、腕を上げて髪を洗うだけでも体力を削られるだろう。  髪を洗いながら頭をマッサージしてやると、あまりにも誘うような声を出すものだから、思わず口づけてしまう。  良いのか悪いのか、またしてもタカギによる偏った性教育によって、大きなものは出して、小さくする。ライオネルにも助けるように言われたと言う始末。  はふはふと真っ赤になって瞳を蕩けさせているスミレに抱く欲が止まらない。  その結果、一緒に三度、四度と達してしまった。  眠るときになって、寝るかと問えばここで眠って良いのかと聞くスミレ。  逆にどこで寝る気かと問えばタカギのところだと答える。  夫婦水入らずの時間だと伝えれば瞳が揺らぐ。抱き上げ布団に押し込めば、連れてくるときにスミレを包んで来た古く小さな毛布を手繰り寄せる。  起きたらいるかとつぶやきながらその額を俺の胸につけ、ぐりぐりと押し付ける。俺が洗ったからか、絡まりぎみな毛先を手櫛で整えてやれば身じろぎされる。 「あのね、タカギ、赤ちゃん楽しみだねぇ」 「そうだな。」 「…タカギあかちゃんうまれたら、僕とはもう、仲良ししてくれないかなぁ?」 「何故そうなる?」 「だって、ぼくはあかちゃんいないし、ぼくがこどもみたいだし、タカギもいそがしくッ、なるだろ、し」  ヒックヒックと涙を流しながら溢すスミレをきつく抱き締め、声をかけようと覗き込めば、スゥスゥと寝息をたてている。もう、眠気も限界だったのだろう。  会話をするのがタカギだけだったならば依存もするだろう。心の拠り所だったのだろう。タカギが出産するまでに数人の侍女を選定し、スミレとの相性を確かめなくては、と優先すべき事を頭に叩きいれる。直ぐに動きたかったが、先ほど起きるまでいると約束をした為、スミレを毛布ごと自分の上に乗せて眠りについた。  起きて挨拶をして瞳が潤むスミレ。 「おやすみして、おはようって嬉しいね?」  スミレは昨夜泣いていたことなど覚えていないようににっこりと笑う。  暫く顔中に口づけ、抱き締め、起きてすぐに出会えたスミレを堪能しているとタカギたちの呼ぶ声がする。  僅かに不安気な声は、タカギもスミレと一緒で不安に思う事があるのだろう。俺も、夜中に何度か夢であったのではないかと起きては確認してしまったくらいだ。  寝室から出て、招き入れたライオネルも一瞬、複雑そうな顔をする。  タカギが衝立の向こうでスミレを着替えさせている間に昨夜の事を話せば、タカギも出産後の事を気にしていたらしく、現在ライオネルとタカギについている侍女三人に事情は話してあるからと聞かされる。 「いいのか?」  タカギに付いている侍女はあの一件以来、人を寄せ付けなかったタカギが心を許しているという証拠だ。 「いや、たぶんというか絶対なんだけど産後は私が他人無理になるよ。本能剥き出しだと思う。それに、ユーシはあんな目にあったからさ、スミレ君に新しく侍女つけるってなったらクレイグと一緒になって一から探すだろうしね。それは私が無理。」 「助かる。」  スミレたちが出て来てこの場を託し、二日分の溜まった政務を片付ける。  暫くはスミレと一緒にいれる時は居てやりたい。  タカギへの負担は否めないが、一緒にいることで二人とも心が安定するようで、医師の見解では、時がたてば二人とも落ち着くのではないのかという事であった。

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