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第18話 治療2

 魔力でフルタのお腹の中を見ながら、アユダルは裂けたオメガの性器に集中する。  ゆっくり…! 確実に…! 丁寧に…!  最初に出血が止まるように、フルタのお腹の中を治癒魔法の光でいっきに満たす。  今度は、少しずつはしから順番に… 断片がずれないよう、裂けめを綺麗に合わせる。  細胞と細胞を地道(じみち)につなげて活性化させ… 血液のめぐりを良くして、それと同時にじわじわと組織を融合(ゆうごう)させる。    黒ずんたフルタの性器がじょじょにピンク色に変わり… そこで出血が無いかを確認して、無ければ… 「たぶん、成功…」  パチッ…! とアユダルが目を開くと、ベッドの向こう側にいる、若いオメガの男と目が合った。  あれ? この人… 昨夜、ケンカをしていた男娼の、1人だよね? 何でこの人が、ここにいるの?! 「ねぇ、どう?! フルタは治りそう?!」 「ああ…… ええ?!」  治療を始めた時は、ベッドで眠るフルタと2人っきりだったのに?! いつの間に、この人はここに来たの?!  アユダルが困惑していると… 「それでどうなんだよ?! なぁ?!」  昨夜、ケンカをしていた、もう1人の男娼が()れて、アユダルの肩に手を置いた。 「はぁ?!」  え?! もう1人いたの?!  背後からも話しかけられ、アユダルはギョッ… と振り向く。  治療に集中していたアユダルは、2人の男娼が部屋に入って来たことに気付かなかったのだ。 「はぁ? じゃないよ! それでフルタは大丈夫なのかよ?!」  向かい側からムッ… としながらたずねられる。 「たぶん… だけど?」 「たぶん?! 何だよ、それ! はっきりしろ、お前!」  背後の男娼がイライラと、アユダルを責めて怒鳴った。 「…だから、僕は治癒魔法が使えても素人だから… とりあえずフルタが死なないように、1番ひどい性器の傷をふさいで止血したけれど、後は本物の治療師に()てもらわないと、ダメだってことだよ!」  ああ、もう… 頭に響くから、大声で怒鳴るなよ! 魔力を大量に使いながら、ものすごく集中していたから… 気力を使い果たしてめまいがするのに…  背後から怒鳴られて、アユダルも腹を立て、肩に置かれた手を振り払い、怒鳴り返した   「だったら、最初からそう言えよ!」 「フルタの傷は、君らをかまっていられるほど、軽くなかったんだよ!! 僕が知らない間に、勝手に来たくせに、いきなり怒鳴るな!」  ううっ… 頭がクラクラする! 気持ち悪い… もう、だめだ… 吐きそう! 目を開けているのも辛い… ううっ…  「おいっ?!」 「うるさい黙れ! フルタが心配なら、今すぐ治療師のところに連れて行ってやれよ! 手首が折れているけど、ボクは骨折を直す魔法を知らないんだ! …ついでに性器の中も僕の治癒魔法が完璧かどうかも確認して!! わかった? 後は頼んだよ?!」  頭を押さえてアユダルは、床にへたり込んだ。 「お… おいっ! お前… 顔が真っ青だぞ?!」 「うるさい! 僕は疲れたから寝るんだ!」  そのままアユダルは床の上にコロリと寝転がると… 本当に眠ってしまった。

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