22 / 43

第22話 眠り過ぎた朝

 トンッ… トンッ… と誰かに肩をたたかれ、アユダルはふと目覚め… ぼんやりと身体を起した。 「今日もあんたは寝ぼすけだね! ほら、起きなよ?!」  ベータ女性の使用人がニコリと笑って、アユダルに服を渡した。 「あ… ありがとう…」  ごそごそと服を着ながら、前日と同じように自分の胸に付けられたレウニールの(あと)を、治癒魔法で綺麗に消して… レウニールを受け入れた下腹にも魔法をかける。  んんん…? 何だか今日は、魔力の調子が良いなぁ…? んん? 魔力がスムーズに身体をめぐり、治癒魔法に使うぶんがうまく患部に流せた!  そう言えば、昨夜はレウニール様がいっぱい食事を食べさせてくれたっけ! ああ、そのおかげで血のめぐりが、良くなったからかもしれない!    トロトロに煮込んだ牛肉と野菜のシチュー、外がカリカリで中がふわふわのパン! それから、デザートの焼きリンゴを、レウニール様が頼んでくれて、僕は久しぶりにお茶を飲みながら一緒に食べたんだ! 思い出すと(よだれ)がたれそう!  ……でも、あれ? 食事した後の記憶が無い…?! んんんん???? 『ふふふっ… 眠そうだなアユダル…? もう少しだけ我慢しろ、すぐにベッドで眠らせてやるから』  不意にアユダルは思い出した。  食事を終えた後、レウニールが行きと同じく部屋に戻る時も、アユダルを抱き上げて連れて来てくれたことを。  ベッドに下ろされたとたんアユダルは眠くなり… レウニールに足から靴を脱がせてもらい、ついでに服も脱がせてもらい… コロリとベッドに転がったとたん、アユダルはレウニールを置き去りにして、1人で夢の中に飛び立った。 「うわああああああぁぁ~~~ 信じられない… 僕だけ寝ちゃったよ!」  何てことを!! レウニール様ったら、優し過ぎるよぉぉぉ! 黙って僕を寝かせてくれるなんてぇ…… 「なぁ! お前に客が来てるぞ?」 「・・・っ?!!」  昨夜の失態についてアユダルが思い悩んでいると… 突然、耳元で若い男の声が聞こえ、ギョッ… と飛び跳ねそうになる。  ベッドに腰を下ろしたアユダルの隣に、いつの間にか、昨日フルタの治療後うるさく問い詰めて来た2人組の男娼の片割れが座っていた。 「お前に言われた通り、昨日フルタを治療師の先生に診せに行ったら、先生がお前に会いたいって、下まで来ているんだよ!」  反対隣には、もう1人の男娼が座っていた。 「うわっ?! いつの間に!」  この2人、本当は仲良しなのかなぁ?! 「ほら、立てよお前!」  2人は両脇から、アユダルの腕をガシッ…! とつかみ、部屋から連れ出そうとする。  「なっ?! 何するんだよ?!」 「だから治療師様に会いに行くの!」 「そうそう! この辺の娼館の娼婦や男娼は、みんなすごくお世話になっている治療師様だから、お前、絶対に失礼なこと言うなよ?!」 「失… 失礼なのは、あんたたちの方だろう?! もう、放せって!」  なぜかアユダルは、ズルズルとすごい力で2人に連れて行かれる。

ともだちにシェアしよう!