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第22話 眠り過ぎた朝
トンッ… トンッ… と誰かに肩をたたかれ、アユダルはふと目覚め… ぼんやりと身体を起した。
「今日もあんたは寝ぼすけだね! ほら、起きなよ?!」
ベータ女性の使用人がニコリと笑って、アユダルに服を渡した。
「あ… ありがとう…」
ごそごそと服を着ながら、前日と同じように自分の胸に付けられたレウニールの痕 を、治癒魔法で綺麗に消して… レウニールを受け入れた下腹にも魔法をかける。
んんん…? 何だか今日は、魔力の調子が良いなぁ…? んん? 魔力がスムーズに身体をめぐり、治癒魔法に使うぶんがうまく患部に流せた!
そう言えば、昨夜はレウニール様がいっぱい食事を食べさせてくれたっけ! ああ、そのおかげで血のめぐりが、良くなったからかもしれない!
トロトロに煮込んだ牛肉と野菜のシチュー、外がカリカリで中がふわふわのパン! それから、デザートの焼きリンゴを、レウニール様が頼んでくれて、僕は久しぶりにお茶を飲みながら一緒に食べたんだ! 思い出すと涎 がたれそう!
……でも、あれ? 食事した後の記憶が無い…?! んんんん????
『ふふふっ… 眠そうだなアユダル…? もう少しだけ我慢しろ、すぐにベッドで眠らせてやるから』
不意にアユダルは思い出した。
食事を終えた後、レウニールが行きと同じく部屋に戻る時も、アユダルを抱き上げて連れて来てくれたことを。
ベッドに下ろされたとたんアユダルは眠くなり… レウニールに足から靴を脱がせてもらい、ついでに服も脱がせてもらい… コロリとベッドに転がったとたん、アユダルはレウニールを置き去りにして、1人で夢の中に飛び立った。
「うわああああああぁぁ~~~ 信じられない… 僕だけ寝ちゃったよ!」
何てことを!! レウニール様ったら、優し過ぎるよぉぉぉ! 黙って僕を寝かせてくれるなんてぇ……
「なぁ! お前に客が来てるぞ?」
「・・・っ?!!」
昨夜の失態についてアユダルが思い悩んでいると… 突然、耳元で若い男の声が聞こえ、ギョッ… と飛び跳ねそうになる。
ベッドに腰を下ろしたアユダルの隣に、いつの間にか、昨日フルタの治療後うるさく問い詰めて来た2人組の男娼の片割れが座っていた。
「お前に言われた通り、昨日フルタを治療師の先生に診せに行ったら、先生がお前に会いたいって、下まで来ているんだよ!」
反対隣には、もう1人の男娼が座っていた。
「うわっ?! いつの間に!」
この2人、本当は仲良しなのかなぁ?!
「ほら、立てよお前!」
2人は両脇から、アユダルの腕をガシッ…! とつかみ、部屋から連れ出そうとする。
「なっ?! 何するんだよ?!」
「だから治療師様に会いに行くの!」
「そうそう! この辺の娼館の娼婦や男娼は、みんなすごくお世話になっている治療師様だから、お前、絶対に失礼なこと言うなよ?!」
「失… 失礼なのは、あんたたちの方だろう?! もう、放せって!」
なぜかアユダルは、ズルズルとすごい力で2人に連れて行かれる。
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