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プロローグ(3)

 だけどどんなに拒絶しても組み敷いている神楽を止められない。  胸の飾りに触れている指は摘んだり引っ張ったりを繰り返し、神楽の唇が捉えたもうひとつの飾りも執拗に舐めてくる。  気持ち悪くて身体を左右に動かしても、神楽は気にも留めず、それどころか唇が少しずつ下りていく。  オレの身体なのに、他人に好き勝手にされる恐怖がいっそう膨れ上がってくる。  オレ、どうなってしまうんだろう。  怖くて身体が強張ってしまうと、神楽はそれを同意と受け取ったのか、腰に巻いてあった紐の結び目を咥えて器用に解いていく――……。  そして……。  オレはとうとう神楽の前で一糸も纏わない姿にされた。それを教えられたのは、凍えるような寒さが全身を襲ったからだ。 「やはり古都の肌はこの降り積もる雪と同じくらい白くて綺麗だ。それに……ああ、ココもすごく綺麗だ」  神楽はオレの太腿に顔を埋める。同時に腰が跳ねた。  怖い。  いやだ。  父さんと母さんはコイツに殺された。  すべてはオレという……大きな力を手に入れるためだけに……。  冷酷な神楽から視線を逸らし、頭上で朱に染まった父さんと母さんを見ると、胃から口へと向かって酸っぱいものが押し上げてくるのを感じた。  視界は歪み、父さんと母さんが見えなくなる。  目じりに違和感があったから、たぶん涙が流れているんだろう。  こんなことなら……。  こういうことなら、さっさとコイツにすべてを渡せばよかった。そうしたら、父さんと母さんは死なずにすんだかもしれない――……。

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