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第1話・大きな傷を抱えて。(1)

 なんだろう。明るい光がオレの閉じた瞼に注ぎ込んでくる。  オレの頭のてっぺんでは、懐かしくて優しい大きな手が何度も行ったり来たりを繰り返していた。  母さん?  それとも、父さん?  目を開けたい。  でも、もしこれが夢だったら?  そう思うと、怖くて開けられない。  だって……。  父さんと母さんは……。  もう、この世界にはいないんだ。  だったら、この手はただの幻覚か何かだろう。  父さんと母さんを殺し、オレの全部を奪おうとした神楽(かぐら)はこんな優しい手をしていないだろうし……。  オレ、もしかして死んじゃったのかな……。  神楽から逃げ切ったと思ったけど、やっぱりあの後捕まって、妖狐の力を全部取られて――。  オレ……死んじゃったのかな。  だったらここは天国だろうか? だって、地獄ならこんなに穏やかな気持ちになるわけないもんな。  ――父さん。  ――母さん。  両親の最後が脳裏にこびりついて離れない。  真っ白な雪の中、真っ赤に染まった二人の姿を思い出せば目頭が熱くなる。  涙が目じりを伝って流れていくのがわかる。  ヘンなの。  涙って、死んでも出てくるんだ。  胸がきゅううっと痛くなって、苦しい思いから守るように身体を抱きしめる。  そうしたら……。  今までオレの頭にあった手が目じりから流れる涙をそっと拭ってくれるんだ。  それは、やっぱりとてもあたたかで、とても優しいものだった。 「かわいそうに……。よほど苦しい思いをしたんだろうね」  聞いたことのない声が聞こえた。

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