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第1話・大きな傷を抱えて。(2)

 ――いや、違う。  この声は知っている。  神楽に追いかけられて気を失う直前に聞こえた声だ。  まさか。  オレ、生きてる?  最後の意識が途切れる直前を思い出し、急に怖くなったオレは閉じていた目を大きく開けた。  途端に明るい太陽がオレの目に飛び込んでくる。  そして目の前には――。  肩まである黒い髪に、黒い瞳をした男がいた。  見た目の年齢は二五歳前後だろうか。  身長は人型になった時のオレよりも大分高い。  だからたぶん、一八〇センチはあるかな。  お日さまのように真ん丸な瞳はすっと細められ、左右対称だ。  その真ん中にある鼻はスッと通り、口元は弧を描いている。頬骨から顎のラインは流れるようだ。眉は綺麗なほど整っている。  見方を変えれば女みたいに見えるけど、首元にある鎖骨は男の物だし、肩幅だってある。  ……誰!!  オレは神楽によって傷つけられた重い身体を起こし、目の前の奴を睨む。  手足はやっぱり痛むけど、そんなことを気にしている暇なんてない。  目の前のコイツは神楽の手先かもしれないんだ!!  だってこんなに綺麗な奴、見たことない。  だから絶対、神楽の手先だっ!! 「あ、動いてはいけないよ。手当てはしたけれど、まだ出血しているから」  ――えっ? 手当て?  言われて神楽に傷つけられた足を見ると、真っ白な包帯が巻かれていた。  オレが自分の足を見ていると、目の前のそいつはオレに向かって手を差し出してきた。だけどさ、手当てをしてくれたからって味方とはかぎらないだろう?

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