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第2話・癒えない傷。(5)
オレは飛び起きて危害を加えてくる幸の手を振りほどこうと身体を捩る。
身体が幸の手から外れると向き合った。
「フーーーーッ!!」
全身の毛を逆立てて牙を見せる。
威嚇するオレ。
「ごめん、痛かったね。だが、こうしないと君の足が治らないんだよ……」
嘘だ。
幸はそう言ってオレを殺す気なんだ!!
信用なんてするか!!
オレは前かがみになっていつでも攻撃できる態勢をつくる。
「古都、頼むから。そんなに暴れないで……。もっと傷口がひらいてしまう」
威嚇するオレに手を伸ばす幸。
うるさい!!
上辺だけのこと言っといてオレを殺す気だっ!!
ガリッツ!!
「っく!!」
伸ばした幸の手はオレの鋭い爪の餌食になる。
その手は……包帯が巻いてあった。昨日、オレが噛みついたり引っ掻いたりした手だ。恐ろしく痛みを伴うはずなのに、だけど幸は苦痛の表情を一瞬したかと思うと、また手を伸ばしてきた。
何度やってきたって同じことだ。
ガリッツ。
オレはまた爪を立て、伸ばしてきた幸の腕を引っ掻く。
見ると、じんわり赤い血が流れている。
ぽたり。
ぽたり。
血はオレの目の前で流れ続けて、ほわほわした白い地面に滴り落ちる。その鮮血は少しずつ大きな輪っかを描いて染みになる。
目の前に広がるのは――……。
真っ白い雪の上に広がる鮮血。
その上に力なく横たわるのは……父さんと母さんの赤く染まった姿――……。
……いやだ。
いやだいやだいやだいやだ!!
父さん、母さん。
なんでオレを置いて逝ったの?
ひとりは嫌だよ。
悲しいよ。
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