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第3話・ひとりといっぴきの奇妙な関係。(5)
すると、コンコン、と、ドアをノックする音が聞こえた。
オレは耳を傾けながらもご馳走にガッつく。
「どうぞ」
幸はノックした相手が誰だかわかったようで、食べ物を口に運ぶのを中断して振り返った。
「あの……鏡先生」
控えめに入って来たのは、この病院の受付係、神崎 加奈子(カンザキ カナコ)。
白い肌をしたひょろっこい彼女は大学生で、『あるばいと』としてここを手伝っているらしい。
人型になったオレよりも頭ひとつ分小さいから、たぶん背は155センチくらいかな?
黒髪は両サイドに束ねられている。真っ白い服は清潔感があって、まさに病院の受付係ぴったりだ。くりっとした大きな目に対照的な小さい顔と桃色の唇は、とてもかわいいと思う。
それに、彼女は愛想が良い。
そんな彼女を瞳に入れると、幸はにっこりとほほ笑んだ。
心なしか、彼女の頬がさっきよりも赤くなったような気がする……。
……なんだろう。
はじめて会った時は別に何も思わなかったのに、最近のオレは少し変なんだ。
幸が彼女に、にこりと笑い返すと、オレは少しイラってする。
大好きなサケを目の前にしても、モヤモヤするし……。
意味わかんない。
だけど、いつまでも彼女と幸に構ってはいられない。
なんたって、目の前にはご馳走があるのだから。
オレは少しゆっくり噛んでいたサケをふたたび目に入れると、口を大きく開けて勢いよく食べはじめる。
「あっ、元気になったんですね古都ちゃん」
そう言うと、彼女は地面に膝をついて嬉しそうにオレを見つめる。
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