5 / 14

第5話

「それにしても、俺の前だったから良かったものの、他の人の前だったら痛い事されてたかもしれないな」 「痛い事って」 「無理矢理、おちんちんの皮剥かれたり」 「そんなの怖い」  明は想像して、背筋が寒くなった。  前に父親から『変な人にはついて行ったらいけないよ』と言われた事を思い出す。  皆んなが新のように、自分に優しく対応してくれる訳ではないのを知った明は泣きそうになった。  それを見た新は、明の前髪を片手で上に上げるとおでこに唇を近づける。 「えっ」  明が声を出した頃には額には熱い唇が触れていた。 (どうしよう、キスされちゃってる)  明らかに風邪のせいではない熱が額から体を熱くさせていく。  唇が離され、新と目が合う。  まだ、額はまだ熱いまま唇の感覚が残っていた。 「驚かせてごめん。明が泣きそうだったからつい。嫌じゃなかった?」  心配そうに目を潤ませている新を直視出来ない。  心臓がバクバクとうるさいほどに鳴り響く。 「い、嫌じゃなかったから」 「本当に!? 良かった」  これも、誰にでもやってるスキンシップなのだろうか。  聞きたいけれど、誰にでもやっているとしたら嫉妬してしまいそうで怖い。  再び、泣きそうになってしまっている明に気づいた新は頬に手を当てると優しく撫でた。 「明が嫌じゃなかったら、定期的にこうやっておねしょしないように、俺が治療してあげようか」  新が何を考えているのかさっぱり分からない。  けれど、おねしょしてしまうのは嫌だし、何よりすごく気持ちいい治療をまた新から受けたい。   「うん。また今日みたいになったら治療して欲しい」 「いいよ。でも、この事は誰にも内緒。二人だけの秘密だよ」 「分かった」  新と二人だけの秘密が出来て嬉しかった明は、にこにこと微笑みながら返事をした。  新はそれに微笑み返すと、頬をに当てていた手を頭に移動させ撫でる。   「明は本当にいい子だな。勉強も教え甲斐がありそうだ」 「あまり厳しいのは嫌だよ」 「分かってる」  そうやって戯れあっているうちに明は安心したのか大きなあくびをしてしまった。  恥ずかしそうな顔をした明を見ながら、新が優しく微笑む。 「毒が出たから体が安心して眠たくなっちゃったんだな。早く下半身拭いて着替えて寝ようか」  新は近くにあったタオルを持ってベッドから出て立ち上がると、サイドテーブルに置いてある、ぬるま湯の入った風呂桶に浸した。 「自分で拭くから」 「ダメ、俺に拭かせて」  また、さっきのように陰茎が勃ってしまいそうになり、明は逃げようとするが、逃げないように両脚を掴まれて抑えられてしまう。 「少し、じっとしててね」 「あっ」  皮を優しく剥かれてから、タオルで陰茎を包まれて握るように拭かれる。  また、ムズムズした気持ちのいい感覚に襲われた明は体の力が抜けてしまった。  根本まで拭き終わると、手が陰茎から離れる。 「もう、拭き終わったから大丈夫だよ」 「う、うん」  触られた陰茎がまた熱を持って、半勃起してしまっている。  どうしようか戸惑っている明をよそに、新はサイドテーブルにタオルを置くと、近くに置いてあった熊柄のパンツとパジャマを持ってぐったりと寝ている明のそばに行った。 「履かせるから、ちょっと足上げて」 「いいって自分で履くから」  体を拭かれるのも恥ずかしかったのに、着替えまで手伝ってもらうなんてと、明は上半身を起こして、新の手からパンツを取ろうとするが、上手く身をかわされてしまう。 「コラっ!病人なんだから暴れちゃダメでしょ」  新にやんわりと注意された明はしょんぼりした顔をしながら、脚を上げた。 「いい子だな」  足の先にパンツが通される。  段々と手が上に上がっていくにつれて、新と体の距離が近くなり、ほのかに薔薇の香りが漂ってくる。  顔が陰茎に近づいてくると、明は反射的に脚を閉じてしまった。 (おちんちん近くで見られちゃってる)  心臓が再びうるさいくらいに鳴り響き、息が荒くなってしまう。  その事を気にしていないのか新はパンツを履かせ終わると、パジャマを手に取った。 「熱が上がってるみたいだから早く、着替えないとな」  足にズボンを通されるとまた、新との体の距離が近くなる。  明は自分でも分かるくらい赤くなっていく顔をどうすればいいか分からず、手で顔を覆い隠した。 「これでよし。って明? そんな恥ずかしかったのか」  ズボンを履かせ終わった新が顔を上に上げると、顔を隠している明が目に入る。 明がそのまま頷くと、新はクスリと笑った。 「可愛いな。じゃ、俺は風呂桶片付けに行くな」 「えっ」  明は慌てて、顔から手を離して新を見る。  聞き違いでなければ、新に可愛いと言われた。  明は立ち上がって、サイドテーブルの近くにいた新に後ろから抱きつく。 「待って」  抱きついて背中に顔を埋めると、驚いた新が振り返る。 「眠るまで側にいて欲しい」  顔を見ていうのが恥ずかしくて、そのままそう伝えると、覆い被すように手を握られる。 「いいよ。本当、明は可愛いな」 「可愛いって……」 「可愛い子に可愛いって言ったらいけなかったか?」  首を横に振ると、新に手をさっきより強く握られる。  心臓まで握りつぶされたかのように胸が痛い。 「明、手まで熱くなっちゃってる。早く寝ないと」  新が後ろを振り向くと明はこくんと頷いて、回していた腕を離し、ベッドへと向かった。  そのまま寝っ転がると、後からベッドに来た新に毛布をかけられる。 「明が眠るまで横にいてあげるから。安心して眠りな」 「うん」  明は毛布にくるまりながら新を見つめた。  新はそんな明の頭をクスリと笑いながら撫でてから、デスクの椅子をベッドサイドまで持ってくるとそこに座った。 「ほら、目閉じないと寝れないよ」 「でも、もう少し新とお話ししたいな」 「話なら風邪が治ってから沢山しよ。今は治すことの方が優先」  そう言って、新はおでこの上に手のひらを置くと目に向かって降ろしていく。 「おやすみ」  目の前が手のひらで真っ暗になると、自然と眠気が出てきてうとうとしてしまう。  そのまま目を閉じると、意識が完全に落ちそうになる。  その時、唇に何か柔らかくて熱いものが触れる感触があった。 「……んんっ?」  明はそれがなんなのか気になったが、眠気が勝ってしまい、瞼を開けずに深い眠りについた。

ともだちにシェアしよう!