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第5話
「俺が追ってるのはピアチェーレセスワーレっていう麻薬だ。最近日本に入ってきて関東圏を中心にかなりの量がばら蒔かれているらしい」
「……蒔いてるのってヤクザなんですか?」
資料に目を通しながら助手席に座る藤堂は古賀に聞く。
「いや、俺の聞く限り関東圏内を牛耳ってるヤクザは手を出していない。お前もこの世界にいるなら聞いたことあるだろ」
「いや、すみません、あまりそういうのは…」
小声で謝り、自分の知識不足を恥じた。
「…はぁ。まぁいい、ここにいる限りよく名前を聞くと思うから教えておく。関東を中心に東日本を取り纏めてるヤクザは羽柴会って言ってな。会長の羽柴剛を中心におおよそ30万人の構成員がいるがここがヤクやってパクられてるって事は絶対にない」
「…羽柴会」
その名を頭に刻み、藤堂は古賀に疑問に思ったことを素直に聞く。
「なんで捕まることは無いんですか?」
「……薬を売らないヤクザ。あいつらのうちで呼んでる名だ。羽柴会は変わりモンの集まりで裏を牛耳って殺しや金貸しをやってる割には薬には一切手をつけない。なんなら警察様にも協力をしてるくらいだからな」
その言葉に藤堂は不思議に思う。
ヤクザが薬で儲けて構成員の数名が捕まるなんてざらにある話だ。ましてや、警察に協力をしてるだなんてありえないと思っていた。
「じゃあ、その薬を売ってるのは誰になるんですか?」
「潜入捜査の時にうちの者が捕まえた京極(キョウゴク)って男から吐かせた名前は"ハウンド"」
「ハウンド…?」
古賀は藤堂の様子を見て鼻で笑い、フロントミラーに目を移す。
「……話は一旦止めだ」
「え?」
すると次の瞬間、古賀はアクセルを強く踏みスピードを上げた。
「ちょちょちょ!なんですか急に!!!」
後ろに若干引かれる感覚に驚き、スピードを上げる古賀に藤堂は大声を上げる。
「騒ぐな。警視庁の人間だ。普通車で着いてきてるがあの車の中に乗ってるのは間違いなく4課の奴らだ」
フロントミラーを目で指しながら古賀が言い、藤堂もフロントミラーをチラリと覗く。
そこには、ちょーっと怖めの顔をした男性が2人おり、こちらをじっと見つめながらしっかりと古賀の運転についてきていた。
「…なんで着いてきてるんですか」
「俺の情報を嗅ぎつけてきたんだろ。ったく、めんどくせぇな…」
古賀の情報探知能力は厚労省の中でもずば抜けている。
そのせいで仕事を取られてしまっている警視庁の人間は古賀の事を忌み嫌っている人が多数いるという。
だから警視庁は警察の名誉の為に功績を上げなければいけないからなのか古賀の情報を確認し、追っている事件を横取りしようとしているのだ。
「新人、俺とバディを組んだんだ。恨むんじゃねぇぞ?」
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