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第9話

古賀は藤堂を肩で担ぎながらしっかり歩く様に指示をした。 「ったく、お前も大したことねぇな…」 「う!うるさいですよ!…自分で、歩けます…」 古賀の言葉に藤堂が怒り、意地になって肩を担いでくれる古賀の手を無理やり振りほどく 一瞬ふらつく藤堂だが、なんとか体制を立て直しきちんと自分の力で歩く。 それを見た古賀は肩を震わせて小刻みに笑いだす。 「何笑ってるんですか!…まったく」 口ではそう言ったが古賀がこんなに笑っているところは勤務をしてから見たことがなかった。 「初心でいいんじゃねぇか…新人よ」 古賀がそう言ってクラブへと戻る扉を開ける。 五月蠅いくらいの音楽がフロア内に鳴り響る中へと戻り、踊る者や酒を嗜む者の間を潜り抜けながら出口へと向かう。 手に入れた薬は捜査課へと持ち帰り、その後鑑定課へと回された。 「初の潜入、頑張ったな新人」 戻ってきた藤堂は今回の成果を赤羽に褒められ、恥ずかしそうに頬を掻いた。 「いや、そんなことは…」 不意に古賀を見ると、先程の出来事をからかっているのかニヤニヤと意地悪な笑みを浮かべながら喫煙室へと煙草を持って向かってしまう。 (あいつ…!!) 握り拳に力を入れ、こみ上げる怒りを抑えながら自分のデスクへと座り、今回の捜査内容をまとめる作業にとりかかった。 皆帰ってしまったのか残っているのは自分と古賀と赤羽のみ。 捜査課のデスクには誰もおらず、藤堂は辺りを見渡して誰もいない事を確認すると先程の出来事を思い出す。 (なんであんな恥ずかしいことが出来るんだよ…) グッと手首を抑えつけられた力の強さや口の中をなぞられた感覚を思い出し藤堂は耳が赤くなる。 自然と指が唇をなぞっており、我に返った藤堂は首を左右に振って考えるのをやめる。 (わ、忘れろ!…忘れればいいんだ…!) そう思い、呪文のように忘れろとだけ呟き続けパソコンに向かう藤堂は、夜勤の社員から過度な勤務内容に精神をやられてしまったのではないかと心配されるのであった。

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