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第12話

古賀の運転でついたのは大通りを抜けて細い小道を何回か曲がった先にあった雑居ビルだった。 「ついたぞ」 シートベルトを外し車を降りる古賀に続くように藤堂も車を降りる。 「こんな所に人がいるんですか…?」 不審に思いながらも古賀の後を追い雑居ビルの中へと入っていく。 何年も掃除がされていないのか、かなり埃っぽい。 藤堂は軽く咳込みながらビル内の階段を上がる。 4階まで上ると古賀は廊下を進み1つの扉をノックなしに開いた。 そしてそのまま何も言わずに部屋の中へと入っていってしまう。 (中入っていいのかよ…!) 藤堂は古賀の行動に驚いて一瞬立ち止るが、置いてかれてはいけないと思い急いで部屋の中へと入る。 するとそこには事務所のようなものがあった。 30平米程度の広さの事務所には1人の男性がオフィスチェアに座りながらカタカタと何台もあるパソコンのデスクトップを見つめて何かを打っていた。 「梶、俺だ」 古賀は梶と呼ばれた男性に話しかけ、梶はヘッドホンを取り此方にくるりと振り向いた。 「知ってるよ。てか入ってくる時はノックするのが普通でしょ」 だるそうに欠伸をし、伸びをすると梶は藤堂の存在に気づき古賀に誰なのかと聞く。 「あ?こいつは…」 古賀が藤堂の方を見ると藤堂は自ら梶に自己紹介をする。 「今年から麻薬取締部捜査課に配属になりました。藤堂成美です」 一礼をして梶を見ると彼はジッと藤堂を見つめ、その後何事もなかったかのように古賀に話しかけた。 「で、今日は何の用?」 「え…」 無視をされた藤堂は呆気にとられるが古賀は容赦なく話をそのまま進めてしまう。 (こいつ等俺の事なんだと思ってるんだよ…!) でもここで突っかかると返って関係を悪くしそうなので藤堂は怒りを堪え古賀の次の言葉を待つ。 「例の薬について新しい情報がないかと思って来た」 それを聞き梶は口をへの字に曲げ、パソコンの方を向き直すと古賀の必要な情報を漁り始める。 「古賀さん、赤羽さんにお代の請求書送るのやめてもらっていいですか。俺が赤羽さんからどんだけ高い額請求してるんだってこの前怒られたんですよ」 事務所のソファに勝手に座り、何も言わずに煙草を取り出し火をつける古賀。 「別にいいじゃねぇか。…てかあれはほんとに高い額過ぎたからだろ」 煙草の煙をはきだしながら古賀が藤堂に座るよう指示する。 古賀の指示を藤堂は素直に聞き、古賀の前に腰掛けると梶についていくつか古賀に聞く。 「梶さんっていくつ何ですか」 梶は見た感じ高校生くらい若く見え、此処を一人で経営しているようには見えなかった。 「梶は~…たしか19だったと思うぞ。人には言えないような情報売って儲けてる、いわば情報屋だ」 「情報屋!?」 古賀の言葉に藤堂は驚きつい大きな声を出してしまう。 「…うるせぇ声出すな。ったく…」 藤堂の大声に慣れている古賀は耳を塞ぎ注意し、煙草の煙と一緒に大きなため息を吐く。 「別に情報屋が存在してても世の中的に問題ないでしょ。古賀さん、これが情報」 梶がくるりと椅子を回転させ藤堂に向かって言い放つと古賀にA4サイズの紙を数枚渡す。 「助かる」 古賀は煙草を梶が出してくれた灰皿に押し付けると渡された用紙に目を通し始める。 「情報屋がいると得する人もいるし、この世界に来たら情報屋の1人や2人持ってなきゃ」 梶は藤堂に向かって言い、机の上にあったペットボトルの炭酸飲料のキャップを開けるとそれをゴクゴクと喉を鳴らして飲む。 「でも歳が若くないですか…まだいろんな道があったのに何故この道に…?」 藤堂は梶を哀れんでいるのか眉尻を下げ心配そうな顔を梶に向ける。 「それ以上は情報料。それに俺は好きでこの道進んでるからそういう目、向けないでもらえる」 (地雷を踏んでしまった…) 藤堂を見下しながら言う梶に古賀が面白そうに笑い、藤堂は素直に梶に謝ると肩を窄めて縮こまった。

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