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第14話
(なんで俺に押し付けて帰るんだあの人は…)
藤堂は古賀の残した報告書を片付けるために捜査課に1人残って残業をしていた。
「あー、帰りたい」
難しい顔をしたり、安堵したりと様々な表情を見せながら書類をまとめる。
藤堂は何とか報告書を作り終え、窓の外の暗くなり街灯が煌々と光っているのを見て驚く。
(やば、もうこんな時間)
左腕にある時計に目をやると秒針は20時前を指していた。
急いでカバンを持ち、帰ろうと思った矢先に古賀から1本の電話が藤堂の携帯にかかってきた。
(なんだ、先に帰ったはずなのに)
3コール以内に出ないとお叱りを受けるので、藤堂は反射的に電話に出る。
『お前、仕事は終わったよな。だったら今から送る住所まで来い』
たったその一言でプツリと電話は切れてしまい藤堂は暗くなった画面をただ呆然と眺めた。
そして電話を切られてすぐに古賀からメッセージが送られてくる。
それは先程の電話の内容であった住所で署から歩いて15分くらいのところだった。
(なんで俺が終わってまで付き合わなきゃ…)
正直このままフケてしまってもいいのではないかと脳を過ぎるが明日の自分の居づらさを考えるとここは素直に行かなくてはいけないという考えに至る。
行き場のない怒りを抱え、藤堂は署をでるとマップアプリを開き送られてきた住所を打ち込み歩きだす。
「あー、今日は餃子とビール飲もうと思ってたんだよ~!!」
そんなことを言ってるうちにアプリは目的地に着き、藤堂は入口で立ち止まる。
目の前にあるのはお洒落な民家のような場所で道に迷ってしまったのかと思い辺りを見回す。
「え、ここ?…入っていいのか?」
住所を確認しアプリをもう一度開き再度確認。
別のアプリも開いて確認するがどのアプリもここを指す。
(イ、インターホン…ないよな。とにかく入ってみるしかないか)
藤堂は深呼吸を1度すると意を決して民家の押戸を押した。
押した先の景色は想像してるものとは大分違っていた。
「やっと来たな。遅い」
中はバーカウンターと2人がけの席が数席、カウンターの向こうには壁1面のお酒とグラスなどが置かれている。
「あ、古賀さん…」
古賀はバーカウンターの奥でグラスを片手にタバコを吸っていた。
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