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第16話
(何処だ、ここ…)
藤堂が目を開けるとそこには自分の知らない部屋が目の前に広がっていた。
何故自分がこんな所に居るのか訳が分からず、必死に昨日の記憶を思い出す。
(古賀さんに呼ばれて店に行って、なんかよくわかんない奴の名前を言われて事件から下ろされそうになってそれで…)
駄目だ、これ以上のことが思い出せない。
1人で焦る藤堂は部屋の外からシャワーを浴びる水音が聞こえてき、良からぬ事を想像した。
(まさか、記憶のないところで誰かとそういう事を…!?)
急いで衣服を確認するとスーツではなく見慣れないスエットが着せられており余計に困惑する。
(男物…!?俺、もしかして)
その瞬間、シャワーの音が止み此方へと向かってくる足音が聞こえてくる。
(ど、どうしよう…)
青ざめる藤堂は布団を手繰り寄せ身を隠しベッドの端で縮こまりながら部屋の扉が開くのをじっと見つめた。
ガチャリと音を立てて扉が開き入ってきた人物が一言
「起きたか」
そこには自分の上司である古賀が上半身裸のまま立って居た。
タオルで髪を拭きながら此方へと近づき藤堂を見ると古賀はニヤリと悪戯っぽく微笑む。
「大胆だったな、新人」
その一言でよからぬ事を考え顔を真っ赤にする藤堂。
(やっぱり俺…そういう事!)
「す、すすすみません!」
とにかく先に謝らなくてはと思い渾身の土下座を古賀に見せ許しを得ようとする。
クローゼットからTシャツを取り出して着替えると古賀は藤堂の考えてる事とは真逆のことを言いだす。
「直接文句を言われたのはお前が初めてだし、スーツに吐かれたのも…あー、お前が初めてだったな」
「はぇ?」
顔を上げると何してるんだと小言を言われ、付け足す様に追い討ちをくらう。
「お前の汚れたスーツも洗ってる途中だから大人しくそれ着て我慢しろ」
そこまで言われて藤堂は我に返り、古賀にした事を断片的に思い出す。
店で古賀に対しての不平不満を連ねその帰り道で気持ち悪くなり古賀のスーツに吐いてしまった後、古賀の自宅に運ばれ介抱してもらったのだ。
(なんという恥晒し…)
藤堂は自分のした事を後悔しここでの生活も終わったと悟る。
(あぁ、これできっと交番生活に逆戻りに…)
折角の出世をこんな形で葬ってしまうなんてと神に祈るかのように懺悔しだす藤堂。
そんな藤堂を見て古賀は首を傾げるとリビングへと向きを変え部屋を出ていく。
「飯、食えそうか?」
廊下の途中で振り返り、様子のおかしい藤堂に話しかけると彼は弾かれたように食べますと二つ返事。
「なら来い」
小さく縮こまりながら申し訳なさそうに着いてくる藤堂を見ては面白いやつをバディにしてしまったなと考える古賀であった。
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