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第17話

「……あの、俺の顔に何かついてますか」 用意してくれた朝食を食べながら藤堂はこちらをジッと見つめてくる古賀に遠慮がちに聞く。 「いや。…美味そうに食うなと」 珈琲を啜りながら静かに微笑む古賀にちょっと大人の色気を感じて藤堂の胸が跳ねる。 (顔はすっごい良いんだよなこのひと…しかもスーツじゃないラフな姿…かなりレアって俺は何考えてんだ!?) 普段のセットされた髪型とは違い、髪は下ろされ無造作になっておりそこから覗くターコイズグリーンの瞳が朝日に透かされ硝子玉の様にキラキラと光っている。 そんな姿が見慣れないからか余計に鼓動が早くなった。 「こ、古賀さん、料理も上手いんですね」 変な考えを誤魔化すように料理を口に運び、完食すると手を合わせて礼を言う。 「別に普通だろ。俺のも食うか?」 「いやそんな滅相もない。ただでさえ作って貰ってるのにこれ以上いただく訳には」 早口でまくし立てるように断り首を振るが古賀はそうかと言って藤堂の皿にサンドイッチを乗せる。 「朝あんまり食わないんだ。食べてくれ」 「あ、そうでしたら…いただきます」 古賀の言葉をあっさり信じ、再度手を合わせる藤堂。 そんな新人の姿を見て古賀は頬杖をついて口元を隠し笑いを堪える。 (ハムスターみたいに食べるなこいつ…) (お、俺昨日相当な事を古賀さんにぶちまけたのかな…!?優しすぎて逆に怖い…!) 食べてる姿を見つめられ古賀にとんでもない事をしでかしたのではないかと背中に変な汗が流れ緊張する。 「……そういやお前、昨日のこと覚えてるのか?」 「………すみません。覚えてないです」 素直に伝えると古賀の口から昨日の出来事が詳細に伝えられた。 「俺と同じ酒飲んで、1杯で酔っ払ったかと思えば凄い早口で俺に対して不平不満言ってきて勝手に泣き出して家まで送ってやろうとしたら帰らないって駄々こねるから仕方なく俺の家まで運ぶ途中で吐いた。…って所だな」 「ほんっっとうにご迷惑おかけしてすみません」 聞けば聞くほど真っ青になる藤堂は再度謝罪をし、頭を下げる。 「あそこまで酔われたら放ってはおけないしな。気にはしてない。バディの事を知っておくのも大事なことだろ」 古賀の口からバディという言葉が聞こえ藤堂は目を点にする。 「お、俺とバディを解消して左遷させるとかは…」 「そこまでの鬼じゃない。まぁ、酒の席での振る舞いは今後気をつけた方がいいかもな。お前は」 (それはごもっともです…) 藤堂は以後気をつけますと古賀に伝え、いただいたサンドイッチを食べ終わる。 「食い終わったら風呂かしてやるから入ってこい。その頃にはスーツの方も洗濯終わるだろう」 「…何から何まですみません」 「気にすんな。…貸し1つな」 悪戯そうに微笑む古賀に何も言えない藤堂はグッと言葉を飲み込み風呂場へと向かうのだった。

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