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第19話
店を出て藤堂に家の場所を聞く古賀であったが相当酔っている藤堂から住所を聞き出すことができずにいた。
「……おい、いい加減に住所教えろ」
「いやです。帰りません」
「なんでだよ。俺といる方が疲れるだろ」
大きなため息を吐き、とりあえずで公園のベンチへと藤堂を座らせると自虐言い突き放そうとする。
だが彼からは意外な言葉が返ってきた。
「そんな事ないです」
酔態しているから怖い物知らずなのかそれが彼の本心なのか古賀は思わずベンチで伸びている藤堂の方を向く。
すると彼はじっと此方を見つめては次のように話し始めた。
「古賀さんといて正直振り回されっぱなしですし、俺の意見全く聞かないし、扱いは雑ですし散々だなって思うことが沢山あります」
「だったら」
「でも、バディを組んでいただいたことを最近は後悔してないです。先輩としてはとっても尊敬出来ますし学びたい事も沢山此処に来てから増えました。古賀さんに早く追いつかなくちゃって焦って空回りばかりですし、まだ全然捜査に協力できてないですけど」
ヘラりと笑う藤堂に古賀は静かに話を聞いた。
「それに男としても古賀さんは尊敬できますよ。…俺、この前までキスすらしたことない童貞ですし」
(何処まで喋ってるんだかこいつは…)
聞いてはいけない様なことまで聞かされた気がするがここは黙っておくことにする。
「あ、誰にも言ったら駄目ですよ。古賀さんにだけ特別に伝えたんですから」
「…酔いすぎだ」
そう言って古賀は藤堂の額にデコピンを食らわし横にさせると、その場にしゃがみ込んだ。
(なんだ。なんなんだこの新人は…)
何故こんなにも動揺しているのか自分にも解らないが目の前で酔っている新人が可愛く見えて仕方がない。
「ねぇ古賀さん」
「今度はなんだ、酔っ払い」
「古賀さんのお家、行ったら駄目ですか?…古賀さんのこと大好きだからもっとよく知りたいなー…なんて」
まさにトドメの一撃とはこのことだろう。
古賀はこれでもかという程大きなため息を吐き出すと無言で藤堂を抱き抱え公園を後にする。
「わっ、古賀さん待って」
「なんだ今度は」
「吐く」
急な体勢移動からか藤堂は古賀の腕から逃れる前にその場で戻してしまった。
生温かい液体が2人のスーツを伝う。
まさかの嘔吐により古賀の理性はなんとか踏み止まり、現実へと引き戻されバディから吐かれた事への対処法を即座に考える。
(こいつなんでもありだな。もう)
幸いなことに自宅が近かった為、足早に向かい玄関前でバディを落とし、自分のスーツも全て脱ぎ捨て風呂場に投げ込むと重たい後輩のスーツもなんとか脱がし引き摺るように部屋へと運び、着替えさせるとベッドへと寝かせた。
(あそこで思いとどまったのが幸いだったな)
嘔吐されたスーツを洗面所と風呂場で洗いながら先ほどの藤堂の顔を思い出しては項垂れる。
「…何考えてるんだ。仮にもバディだぞ…」
半勃ちになったソレを鎮める様に事件の今後の流れや仕事のことを考え夜な夜な処理する古賀であった。
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