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第25話

携帯のアラームが部屋に鳴り響き、藤堂は目を覚ますと寝惚け眼で起きあがろうとするが…。 (な、なんだこれ…) 全身が筋肉痛なのか指一本も動かない。 「……っ!?」 おまけに声も枯れているのか掠れ声しか出てこない。 (身体も声もいうこと聞かない……) アラームを止められないで苦労してると、部屋の扉が開き風呂上がりの古賀が入ってくる。 (デジャブすぎる…) 藤堂は先月にも同様のシチュエーションを体験したことを思い出し、目を閉じた。 (でも、先月は無事だったのに今回は無事じゃないぞ…腰が砕けそうだし、何より尻が痛すぎる!!) 上司と一線越えてしまった事実を受け入れきれない藤堂は枕に打つ伏せになりながら昨日の古賀の表情と自分の行いを思い出して赤面する。 寝ているベッドに古賀が乗ると鳴り続けているアラームを止め、藤堂に体調を聞いてきた。 「…大丈夫か」 声が出ないことと身体がいうことを聞かないことをなんとか身振りで伝えると古賀は理解し、彼の頭を乱暴に撫ですまなかったと小さな声で謝った。 (いや、俺が注意不足だったのが原因なんだけど…) 「薬の効果を除くことが最優先だったからお前の意思と関係なし好き勝手にやらせてもらっちまったし…」 そう言って古賀は昨日のその後の事とこれからの対応について事務的に話しだす。 「とりあえずお前の身体が動けるようになったら病院で診てもらう。課長には話が通ってるのと今回の件に関して煌晻の動きが大胆なこともあって厳重調査に切り替えてもらった」 藤堂は厳重調査という言葉を聞いて、落ち込む。 自分がミスをしてしまったがために相手方の動きが慎重になってしまい、確保への道が遅くなってしまったという事を意味するからだ。 (古賀さんの足を引っ張ってしまった…) 大口を叩いたくせに失態を犯してしまい、藤堂は泣きそうになる。 すると、そんな藤堂を見て古賀がため息をつく。 「お前のせいじゃない。俺の警戒が甘かったのと、煌晻があの場にいる事自体がイレギュラーだった。」 「…でもっ!」 掠れた声で反論しようとすると、その口を指で静かに止められた。 「でもじゃない。今回は俺の落ち度だ。…お前を危険に晒してすまなかった」 頭を下げて謝る古賀に藤堂は痛い事など忘れたかの様に反射的に起き上がり、謝らないでくれと頭を上げさせる。 「…とにかく、先にお前を診せるのが先だ。ゆっくり寝てていいから起き上がれるようになったら教えてくれ」 それだけ言うと古賀は藤堂を寝かせ、自分は部屋を出ていってしまう。 1人きりになると、藤堂は天井を見上げながら今後について考える。 (俺、今回こそ左遷だろうな……てか、古賀さん昨日のことについてなんとも思ってないのか) あれだけのことをして置いて一切表情に出ていないことが少しだけ気にかかった。 (こっちは恥ずかしくて目が合わせられないってのに…いや、まぁ薬のせいでおかしくなってたってのもあるけど…) 先程の言い方からして古賀の中で、先日のことは無かったことにしようと言う事なのだろうか…と思い心がすり減っていく。 (俺だけが意識してばっかりだ…) 虚しい気持ちをグッと押し殺し、藤堂は気合いでなんとか起きあがろうと試みるのであった。

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