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第29話

「藤堂の中で古賀さんってどんなイメージなの?」 「どんな…って言われても」 「怖い人?」 「最初はそうでしたけど…最近は」 ここに配属された当初は確かに怖いし取っ付き難い上司で幸先が不安でしかなかった。 だが最近は仕事の出来を少しずつ褒めてくれることも増え、認めてもらえつつあるのかなと感じていた。 「俺の頑張りをきちんと見ててくれて…素っ気ないですけど褒めてくれますし…い、良い上司だなと思います」 なんだか自分で言ってて恥ずかしくなる。 「古賀さん、結構…ていうか相当藤堂のこと気に入ってるよ。あの人こっちに戻ってきてからのバデは誰1人長続きしなかったから」 (そういえばバディ組む時も言われたな…) あの時のことを思い出しながら梶に訳を聞く。 「こんなこと梶さんに聞くのは間違ってると思いますけど…古賀さんどうしてバディを組むのを嫌うんですか…?」 別にペアを組んで捜査を行うことは変なことでは無いが頑なに組みたがらないのには何か訳があるのだろうと藤堂は思う。 「間違ってると思うなら俺に聞かないでよ」 「だって、本人に聞いても教えて貰えないですし…情報料なら払います」 「えー、高いよ?俺」 指で円を作り胸の前にかがげると藤堂は了承する様に何度も首を縦に振る。 貴重な情報を今この場で聞かなくてはと前のめりな藤堂に折れたのか梶が大きな溜め息をはく。 「古賀さんに言わないでよ。俺の首が密かに飛ぶ」 「他言無用に致しますのでどうか…」 「わかった。わかったからそのキラキラした目やめて」 そう言うと梶が小さな声で話しだす。 「古賀さんがアメリカにいた話は知ってる?」 「はい。警視庁の先輩からチラッと」 志摩のことを簡単に梶に説明し、話の続きを聞く。 「なら早いか。…古賀さんはあっちにいた時は普通にバディを組んでたんだけど今の藤堂みたいに煌晻にバディを…うーんなんて言ったらいいんだろう。囮捜査で薬を吸わされたんだよね」 梶の言葉が詰まり、藤堂はなんとなく話の流れを察し、初めて煌晻にあった時の言葉を思い出す。 『君のバディ…また壊しちゃったかも』 あの時は自分のことで精一杯で余裕がなかったが、この話を聞いてやっと意味を理解することができた。 「その人は生きてるんですか?」 「まぁ、生きてはいるんだけど残念なことにバディがそれがきっかけでハマっちゃったんだ。 その人のせいで捜査を撹乱されちゃって、出所が行方を晦ましてそれに古賀さん自身が責任感じて日本に戻されたって感じ。」 「なるほど…」 「赤羽さんも解ってるし、多分上も解ってはいたと思うけど囮捜査を実行したのは古賀さんの指示だから処分をせざる負えなかった。だから、危険な目に会うのは自分1人でいいと思ってそっけない態度も取るし、寄せ付けないように1人で突っ走ってるんだよ。あの人」 梶の情報は藤堂にとても有益なものであり、古賀の言動が自分の中で腑に落ちる。 「あぁ見えて人一倍世話焼きだよ。あの人は」 藤堂は当たり前のような顔をして頷き、梶の言葉に同意する。 「それはわかります」 その言葉に首を傾げると同時に墓穴を掘ったと思い急いで口を両手で塞いだ。

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