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三曲目

マイクやヘッドホンがある。 音楽の収録スタジオと言うと誰もが連想するであろう空間で音也はヘッドホンに手を伸ばした。 程なくしてただ好きな人の収録が始まった。 音也は緊張する事なくその美声を隣のブースで見ている者たちに聴かせ始めた。 ♪ただ好きなアイツに会いたいもう一度… 歌い終えると音也は安堵のため息を吐いた。 刹那、桐生の声が音也のヘッドホンに流れた。 「ダメだ」 「エ…」 音也は音程もリズムも外してはいなかった。 「なんで…」 自分の美声に酔って歌う音也の歌声はただ綺麗なだけだったのだ。 人の心を打つ歌い方などを心得ている桐生は音也にもう一度自分の声に酔わずに歌え…と言い音也を驚かせた。

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