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5.
悲しい。寂しい。僕は本当にいけない子だ。
自分が情けなくて、目に涙を浮かべてズンと来る腹痛とズキズキとする頭痛に耐えつつ、いつ来るのかさえ分からない兄のことを待っていた。
その間も嫌な思考に陥り、そんな自分に飽きていた時、木の軋む音が聞こえてきた。
バッと顔を上げると、着替えと新しい布団一式を手にこちらに歩み寄ってくる兄の姿があった。
戻ってきた。
「葵、お待たせ。着替えようか」
両膝を着いた碧人がごく自然と着替えさせようとして、その差し伸べてきた手にすがりついた。
「葵⋯⋯? 無理しちゃダメだよ」
「⋯⋯服、汚しちゃってごめんなさい⋯⋯。生理終わったら、どんなお仕置きも受けるから⋯⋯今は一人にしないで」
鼻をすすって、ぽろぽろと涙を零しながら必死になって訴える。
見ずともきっと布団までも汚しておいて、こんなこと聞いてくれると図々しいと思われているかもしれない。
だけど、言わずにいられない。
「さっきのことは怒ってないよ」
嗚咽を漏らしながら、許しを乞うてもらおうと謝罪を口にしていると静かにそう言われ、ふわりと頭を撫でられた。
「生理の時の葵は発情期とはまた違って、寂しがり屋の甘えんぼうになるね。葵が望むなら、いくらでも一緒にいてあげる」
小さく笑む兄の口から発せられた言葉に、嘘だと思ってしまった。
そんなことを叶えてくれるだなんて、夢だと思ってしまうぐらい叶わないことだから。
「本当に、いいの⋯⋯?」
「そのぐらいは」
疑いの目を向けていることすら兄の目にはお見通しだろうに、それでも優しく微笑むだけだった。
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