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「⋯⋯そんな身構えなくてもいいのに」 目を開けた先に薄らと笑みを浮かべる兄と目が合った。 「行為している時に、触れられるのが久しぶりでつい⋯⋯」 「ふぅん⋯⋯そう。てっきり、僕からの一心な愛に怯えているものかと思ったよ」 「そ、そんなこと⋯⋯──んっ」 不意を突くように再び頭に口付けられ、小さく跳ねた。 「反応が可愛いね。少しずつ触れていったら、もっと可愛い反応をする⋯⋯?」 悪戯を思いついたというような笑みをしたかと思えば、額、まぶた、鼻、頬と丁寧に口付けされる。 乱暴な行為の時に触れられたことのない箇所もあって、その新鮮と気持ちよさに、逐一身体が震えた。 けども、唇に触れてくれなくて物悲しい。 「⋯⋯ねぇ⋯⋯、唇は⋯⋯」 首筋、鎖骨へと口付ける兄に問いかける。 「⋯⋯唇に、欲しいって⋯⋯?」 「うっ、⋯⋯ん⋯⋯ほしい⋯⋯」 「ふふ⋯⋯そう⋯⋯でも、葵の可愛いおねだりでもダメかな」 「⋯⋯え⋯⋯なんで」 「⋯⋯だって、葵。思わず言ってしまうほど、身体が欲していることじゃない? それはいつもしていることだから、どれくらい気持ちいいのかも知っている。⋯⋯この意味、分かる?」 まるで小さな子どもに問いかけるような口調で紡がれた言葉の意味が分かった時、噤むこととなった。 碧人の腕を掴んで、しかしそれは小さな抵抗でしかないことをしつつも、息ができないほど深く舌を交える行為は脳内麻薬のようで、足がつかないようなふわふわとした感覚がたまらなく癖になっている。 そう、それはいわば興奮している状態。今の少しずつ味わう行為に反しているのだ。 「あと二日待ったら、してあげるから」

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