16 / 47
16.
慰めるかのように頬にキスをしてくれた。
あと二日ならどうにか頑張れそう。
お礼の意味も込めて、葵人も頬にキスをし返すと、「ふふ、ありがとう。身体にもいっぱい痕をつけてあげるね」と言って、両肩、二の腕、肘にまでキスをした。
「⋯⋯も⋯⋯っ、だめ⋯⋯達しちゃいそう⋯⋯」
「⋯⋯ふふ。早いけど今日はここまでだね」
「⋯⋯ぁ⋯⋯」
掬うように髪を撫でられた後、浴衣を直し、布団を掛け直してくれた兄は葵人から離れた。
半ば無意識に言ってしまったことに後悔した。
「⋯⋯ごめ⋯⋯な、さ⋯⋯っ」
視界がじんわりと滲む。
今日もまた浴衣を汚してしまったから、きついお仕置きをして欲しい。
その肌にもっと触れていたい。
「⋯⋯何も、謝ることじゃないよ」
立ち上がっていた兄がそばに座った。
が、ただ優しく微笑んでくれるだけで、触れてこようとしない。
触れ合うのは許された時間の中だけ。今も我慢しきれなくなったのだから中断させたのに、自ら触れようとするなんてさすがに呆れさせてしまう。
けれど⋯⋯。
「それとも、謝るようなことをこれからしようとしているわけ⋯⋯?」
ゆっくりと首を傾げながら訊ねてくる。
誰もが惚れてしまうような笑みを称えたままで見つめてくる。だが、葵人の目には静かに憤っているように見えた。
次に発する一言で碧人の態度を一変させてしまうかもしれない。
けれども、どっちに転んでも葵人にとっては嬉しいことだった。
だから、素直な気持ちを口にする。
ともだちにシェアしよう!