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17.
「⋯⋯あ、あのね⋯⋯。途中で止めさせておいてなんだけど、⋯⋯あ、あお⋯⋯さんの温もりを感じられなくなった途端、寂しくなっちゃって⋯⋯だからね、撫でてくれるだけでもいいから、触れて欲しくて⋯⋯」
目に溜めていた涙が、一筋流れた。
自分が思っていた以上に恐怖を覚えていたようで、震える声を無理やり出した。
「⋯⋯⋯」
傾けていた首をゆっくりと戻す。
その間でも、微笑んでいるようにも怒りを滲ませているようにも見える表情を葵人に見せつけながらも。
静まり返るこの間が嫌で仕方なかった。しかし、呼吸をすることすら許されないような雰囲気でもあり、やがて緊張が走った。
「⋯⋯ふ」
鼓動が速まる中、静寂を破る声が聞こえた。
自身の鼓動で耳が支配されていたせいで、碧人が肩を震わせてまで何に笑っているのか分からず、きょとんとする形になった。
「ふふ、なんて可愛いの⋯⋯。葵の身体が許してくれるなら、限界まで触れていたかったよ。⋯⋯そんなことを言われてしまうと、僕も我慢しきれなくなってしまう」
触れて欲しい手を口元に添え、まるで愛おしさが堪えきれないとばかりに笑い続けていた。
ぽかんとした。
お仕置きをされてもいいが、怒られるのは怖いと思っていたものだから、その怒られずに済んで良かったが、拍子抜けしてしまった。
ひとしきり笑った碧人は、一呼吸をした。
「どうして葵はそんなにも楽しませてくれるの⋯⋯そんな葵が本当に好き。好きで堪らなくなるよ」
手を着いたかと思ってたもう片方の手で、頬に触れようとしてくるのが分かり、それを期待した眼差しで追っていたのも束の間、寸前で止まってしまった。
挙げ句、また離れていってしまった。
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